フラジオレット | ナノ





※殺伐臨静微病?
※急に始まって急に終わる























「あ、」



 伸ばした指が喉仏を滑る。そのまま親指をぐるりと回して、俺は両手でシズちゃんの首を絞めた。ゆっくり、ゆっくりと力を込めていく。彼のペール色の肌が真白く変わる。チアノーゼが見える。酸素を求めようと胸が上下しているのがわかる。それでも俺が冷めた頭で見下ろしていると、シズちゃんはいつもより細く乾いた声を漏らした。



「い、ざ」



 や、を飲み込んで、俺の手首に添えられていた手のひらが離れた。少し痙攣を起こしている彼の指は戸惑いながら俺の顔へと近づいてくる。そして、ふいにその指が下がったかと思うと、ゆるい力で首を絞められた。

 なんて滑稽なんだろう。俺は視界の端で震えるシズちゃんの両手を見ながら思った。いい年した大人が、床に転がって、お互いの首を絞めあっている。なんて醜悪で、滑稽で、あぁ、いとおしい。

 そろそろ苦しくなってきた。脳ってものは酸素が足りなくなると思考を放棄するらしい。普段言葉が渦巻く胸のうちが白く塗りつぶされていく。同じように白い顔面が俺の下であえぐ。シズちゃんはぼろぼろ泣いていた。あぁ、あぁ、なんて滑稽!青白くなる顔、痙攣、そして、






「っふ、はっあ!はぁ、」
「け、ほ、」






 俺は手を放した。瞬時にシズちゃんの顔に赤みが戻って、ひゅうひゅうと勢いよく呼吸をする音が聞こえる。俺が手を放したその瞬間からシズちゃんも俺の首を絞めるのをやめていて、さっきまで俺の喉を這っていた白く長い指はバーテン服のベストの上で上下する胸を必死で押さえつけていた。まだ少し白いシズちゃんの唇は数回開閉して、それからすれた声で呟く。



「こ、ろす」
「っふふ、奇遇だね。俺もおんなじこと考えてたよ」



 これもある意味運命ってヤツかもね。

 そう呟いて、彼の首元に薄っすら浮かんだ赤黒い色をいとおしそうに見つめる俺。シズちゃんは「しね」とだけ言ってその引きつった唇でにやりと笑った。
































囁く狂気は



(殺したいほど愛してるなんて、よくある話)




















100806

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ついったで出た首絞め臨静。こういうのを書いてると戦争コンビっぽいなぁ…と思います。生と死の境目で楽しんでる、殺したいと言いつつギリギリで生かす不安定な関係。
実はコレ五月末に書いたのを加筆修正しただけの作品(笑)珍しく短い。










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