フラジオレット | ナノ





※来神ドタシズ←臨
※ドタチン視点




















「かっ、門田!」
「あ?」



 じとじとと梅雨の開け切らない嫌な天気で湿気る廊下を上履きの間抜けな音を立てながら進んでいると、背後から妙に上ずった声が聞こえて俺は振り返る。見れば着崩した制服に金髪が目立つ同級生、平和島静雄が息を切らして廊下に仁王立ちしていた。静雄は慌てた様子で口を開く。



「お前、ケガしたって、ホントか」
「怪我?」



 あぁ、コレのことか?すい、と学ランの袖をめくり包帯の巻かれた左腕を差し出す。怪我の経緯を思い出して俺は思わず苦笑いしてしまった。何故ならこの怪我、実はこの間の授g「ごめん」…う?

 見上げれば、静雄が真っ青な顔をしていた。



「ほんと、ごめん、俺の、俺のせいで、ごめん」
「おいおい、ちょっと待て、話が見えねぇ」



 ごめん、と一言呟くごとにその顔をくしゃりと歪め、だんだんと泣きそうな顔になってくる静雄。俺は慌ててヤツの傍に駆け寄る。ぎり、拳を握り締める音が鮮明に聞こえた。



「だって、そのケガ、俺のせいだって、俺が最近門田と一緒にいるから、俺のこと狙ったヤツにやられた傷だって」
「……はぁ?」
「ごめん、俺がいなきゃ、門田は、」
「ストップ、静雄」



 興奮からか赤みの差した頬とは対照的な真っ青な唇が紡ぐその言葉を遮った。かろうじて涙は確認されていないものの、あまりにも悲痛な表情をする静雄を俺は止めなればいけなかった。なんせ、コイツがこんな顔をする必要は一ミクロンも無いのだ。俺は溜息をつく。



「あのな、コレは俺が体育の授業でこけたときの傷。俺が自分でバカやってつけた傷だ」
「え、でも」
「…静雄、折原の言うことは信用するなって言っただろ?」
「あ」



 ようやく気付いたのか、静雄がぽかん、とした目で俺を見る。俺はもう一度、小さく溜息をついた。まったく、ホントにすぐに騙される。良くも悪くも単純明快、素直なかわいいヤツだ。俺は静雄の痛んだ金髪を撫でてやろうと、手を伸ばした。



「静雄、お前が俺のこと心配してくれるのは嬉しかったg」
「いぃぃざぁぁやぁぁぁぁァァ!!!!!」



 が、突然上げられた怒号に思わず硬直。見れば怒りのあまり額に血管を浮かべた静雄がギリギリと奥歯をかみ締めながら息を荒くしている。あぁ、キレて、いる。



「臨也…あの野郎…騙しやがった…」
「今更気付いたの?シズちゃんってホントバカだねぇ」
「っ、折原!」



 ぶつぶつと何かを呟いていた静雄に答えるように、廊下の角から現れたのはアイツ。ばちり、赤い瞳が一瞬だけ俺を捕らえた。まためんどくさいタイミングで、そう思って俺は頭を抱える。どうせ無駄だ、諦めよう。きっとこの後静雄は俺の静止も聞かずに折原の野郎を追いかけて追いかけて追いかけ回した挙句、折原によってプールに突き落とされるか器物損害で職員室に呼ばれておしまい、そんなところだろう。



「臨也ぁぁァァ!!!ぶっ殺す!!!!」
「あはは、シズちゃんに殺されてあげるなんてサービス、俺にはないよ!」



 期待を裏切らず、静雄は俺の横を全速力で駆け抜けて行った。もちろん、静雄がスタートダッシュを切る前に折原は廊下の陰に消えており、軽快な足音を騒がしい雄叫びが追いかける形になる。周囲にざわめきを残して走り去っていった嵐二人に、俺は盛大な溜息を付いた。



「…ったく、怪しいとは思ってたんだがな」



 俺はそう呟いてから、腕に巻かれた包帯に目を落とした。端のテープを破り、些か乱暴な手振りでソレを解くと、その下には何てことない数本の擦り傷が横たわっている。俺は折原が巻いた包帯をゴミ箱に投げ捨てると、重い足取りのまま二人の後を追いかけることにした。























(果たしてコレは復讐か、それとも、)
















リベンジ オア エンヴィー





100705

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来神ドタシズ(←臨也)っぽいなにか。本人は「青春休憩、みんなで昼食」の後日談的なノリで書いております。静雄さんにあーんしてたドタチンが羨ましい!そして憎い!な臨也さん(笑)
拍手の臨也不憫率に定評のあるやしろぎです。←

そして途中、こっそり臨也さんのセリフに某キャラのセリフを紛れ込ませてみたり…(笑)










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