フラジオレット | ナノ





※意味がわかると怖いコピペパロ
※新羅視点























 普段僕はあまり地下鉄を利用しない。自分の足で歩くのは億劫だし、どうせ出かけるときは仕事の依頼だからタクシーで行っても交通費が出るからだ。そんな僕が彼に出会ったのは偶然だった。

 目の前で電車を逃した僕は息を切らしながらホームにたたずんでいた。もみくちゃにされた白衣のしわを伸ばす。ふと、横にうつろな目をした男が立っていることに気づいた。男はどう見ても浮浪者で、ぼろぼろの衣服にくたびれた帽子。男のにごった目はこれから電車が到着するであろう線路とは逆の、人通りの多いコンコースを眺めていた。



「雌豚」



 ふと、男が何かを呟いた。僕は好奇心に駆られて視線の先を辿る。見ればそちらには、来良学園の制服を着た派手な化粧の女の子たちが三人ほどたむろしていた。なんだ、ただの悪口か、そう思って僕は溜息をつく。



「鶏」



 また男が呟いた。今度は誰に向けて悪口を言ってるんだろう、また僕は視線を辿る。そこにはまたしてもターコイズ色の制服を着た学生が立っていた。黒い髪の、あれ、竜ヶ峰くんじゃないか。確かに彼、気が強そうには見えないけど、びびり扱いはひどいなぁ。気付けは僕は浮浪者の悪口に夢中になっていた。



「平和島静雄」



 静雄?なんでここで同級生の名前が、そう思ってみれば、黒いコートの男が携帯を見ながら歩いていた。臨也?何してるんだろうこんなところで。静雄、か。いつも殺す殺す言いながら未だにあの関係を続けてるわけだし、まぁ臨也の目の前で彼の名前を出したら盛大にしかめっ面するだろうけどね。ある意味的確な悪口だよ。



「なし」



 見れば、視線の先にはスクリーン。ちょうど何かのバラエティ番組で映し出された衝撃映像にいたのは唯一無二、僕のいとしの都市伝説だった。なしって、首がないってこと?それ悪口?あぁいや、きっと彼は「言うことなし」ってことだったんだろう。さすがセルティ、この悪口男も黙らせる君の魅力はグローバルって事だよね。ホームのアナウンスが列車の到着を告げる。



「マグロ」



 男の視線の先には女の子。背の高い高校生ぐらいの男の子の腕を取り、幸せそうに歩く帽子の子。播磨さん、だっけ?マグロって、え、まさかあの子不感症なの?とか下世話な考えが浮かんだが、そんなことこの男が知る由もないはずだ。なんだろう、適当な悪口を言い始めたのかな。



 僕は腑に落ちなくなってきた彼の悪口が気になっていた。もしかして苦手なものがわかるのかな?それとも何か別の、そう思うといてもたってもいられなくなって、僕は二本目の列車を見送り男に声をかけた。君が言ってるのが悪口じゃないんなら、いったい君には何が見えてるんだい?男は虚ろな瞳で僕の事を見つめると、彼の骨ばった手のひらを僕の額に重ねた。男は最後に「ごぼう」とだけ呟いて行ってしまった。














 今や僕が手に入れたあの男の能力がわかって、僕は笑ってしまった。男は前日に彼らが食べたものを呟いていただけだったのだ。あぁ、セルティのきんぴらごぼう、おいしかったな。






























ごちそうさまでした。























100723

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元ネタを知っているとオチが丸わかりで「やっぱりな」としか言いようがない(苦笑)これ…臨静…なのかな…?カニバリズム臨也さんオチという。










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