液晶の画面が煌々と光る。深夜にもかかわらず、ワゴンの中ではページをめくる音とキーボードを叩く音がひっきりなしに響いていた。居合わせたのは門田、狩沢、遊馬崎の三人。渡草はというと、先刻ふらりと出て行ったきり帰ってきていない。運転手不在のワゴンのエンジンは切れており、各々が各々の作業に熱中しているためか、音はするものの車内は全くの無言であった。
ふいに、口を開いた者がいた。
「門田さん」
声は遊馬崎のものだった。自分の名前が呼ばれたことにぴくりと肩を震わせて、門田はその顔を後ろに向ける。読んでいた小説を膝の上に、ブックライトは下方から遊馬崎の顔を照らしていた。薄暗いせいもあって、その表情は良くわからない。門田は首をかしげる。
「何だ、ゆまさ、」
門田が彼の名前を最後まで言えなかったのは、遊馬崎の距離が先程よりも近くなっていることに気付いたからだ。何事かと身構える間もなく、遊馬崎の顔はその距離を縮める。
「っ、おい、遊馬崎」
「ちょっと黙って」
パソコンの液晶が遊馬崎を照らして、見れば近づいた彼の両目は見開かれていた。
ヤバイ、そう思って門田が思わず手を出そうとした次の瞬間、唐突に遊馬崎が叫んだ。
「やっぱり!!」
「は?」
「生徒会新刊の特典、こっちの方がいいじゃないっすかぁ!!」
するり、遊馬崎は門田の耳横を抜けて、液晶へと手を伸ばしていた。彼がなぞる画面には、一件の広告。それは先日、遊馬崎が書店で手に入れたライトノベルの表紙によく似たものだった。
「いやいや、もう三冊買っちゃったんすけど、明日にでもこの書店に走らないと」
ちょっと失礼します、と言って脇からパソコンを操作する。ノートパソコンは未だ自分の膝の上に乗ったままなので、拍子抜けしたまま門田がどうにも動けず視線をさまよわせていると、後部座席で一人沈黙を貫いていた狩沢と目が合った。目が合うなり狩沢はにやりと笑って、無音のまま口を動かす。その唇は高らかに、
『把握した!』
と、叫んでいた。
何を、どこまで、どうして狩沢に把握されたのかわからない門田は、未だ液晶画面に夢中な遊馬崎を睨みつけて、ただ赤面するばかりだった。
美少女発見!
(「俺の美少女センサー舐めてもらっちゃ困るっすよ!」)
100414
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お題サイト様にて「これは・・・」と思うものがあったので拝借いたしました。これは遊馬門でやるしかないかと(笑)
お題配布元:確かに恋だった
「美少年発見!」