「はは、俺が王様」
「あれ、そういえば臨也って王様初めてじゃない?」
『そう言われてみれば』
「二回目だろ・・・一回目の命令は却下された」
「あぁ、さすがに全裸でひ「遊馬崎、言わなくていい」
「・・・手前ェ・・・何しやがった」
ひらひらと赤い印を振るのは臨也。彼は至極当然とでも言うようにその竹串を掲げていた。そんな彼をギロリ、と静雄が不審の目で睨みつける。臨也は手のひらを見せて胡散臭い声を上げた。
「何も?ほら」
「・・・・・・・・・」
静雄は臨也の手を覗き込んだが、差し出されたそれはただ線の細い手の平で、不正を立証できないとわかると静雄は舌打ちをして不機嫌に腰を下ろした。何だ、何をしやがった、このノミ蟲ヤローは。
必死で考え込む静雄の二つ隣、実質臨也の隣に座っている新羅は呆れたような声で警告する。
「さっきみたいな命令はダメだからね」
「わかってるよ」
ジト目でこちらを睨む新羅を、めんどくさい、とでも言わんばかりのため息をつきながら臨也はあしらう。彼はすぐにその表情を人当たりのいい好青年のそれに変えると、自分のちょうど斜め前方で胡坐をかいている静雄に向き直って言った。
「とりあえず、シズちゃんは俺のこと『ご主人様』って呼んでよ」
「誰が呼ぶか!!」
ガタン、と立ち上がった勢いで目の前のローテーブルに足をぶつける静雄。だが当人はそんな些細な痛みなど感じ取れないようで、額に青筋を浮かべては今にも臨也に殴りかかりそうな雰囲気をかもし出していた。静雄はテーブルを蹴り上げたくなる衝動を押さえ、ハッ、と乾いた笑いをこぼす。
「・・・大体、このゲームじゃ名指しは無意味だ」
「あぁ、番号?じゃあ、"四番のシズちゃん"って言えばいい?」
「ッ、!!手前、何で・・・!」
「情報屋を舐めないでくれるかなぁ」
静雄に握りつぶされたもろい木の棒には、確かに"四"と言う数字が書かれていた。臨也がどうしてそれを知っているのか、もちろん"静雄は"知る由も無い。
「臨也手前・・・!!」
「おっと、『臨也』じゃないでしょ?」
人差し指でいなされて、静雄はぐっと言葉に詰まった。
「はい、リピートアフターミー、『ご主人様』?」
「ごしゅじ・・・って言うわけねぇだろノミ蟲がぁぁあ!!!」
「何事も経験だよ、兄さん」と言う弟の言葉一つで長時間耐え続けていたものの、臨也のこの一言にリミッターが外れた静雄は、ローテーブルを担ぎ上げて既に玄関へと姿を消している臨也の後を追った。
嵐のように過ぎ去っていった二人を呆然と見つめる四人だったが、階下遠く聞こえたガラスの割れるような音で現実に引き戻される。それが自宅から持ち出されたローテーブルの砕ける音だと気付いた新羅は、一人小さく苦笑した。
微妙な空気が流れる中、最初に口を開いたのは門田だった。
「・・・じゃ、俺は帰るよ。邪魔したな」
「あ、門田さんが帰るなら俺も」
「あぁ、うん」
『またな』
セルティと新羅が見送りに立ち上がる間もなく大股で玄関へと向かう門田を追って、遊馬崎も廊下の陰に消えてしまった。
残された二人は、いつもの風景に戻っただけのはずの部屋がどこか閑散としているように思えて、お互い顔を見合わせて苦笑してしまう。・・・いや、その理由で苦笑したのはセルティだけだった。
「ところでセルティ、その格好のまま今夜はお医者さんごっこでももああああいたいいたいよセルティィィ」
興奮気味に口を開いた新羅にスリーパーホールドを決めるセルティ。死ぬ、と新羅が悲鳴を上げ始めた頃、ふいにセルティがその腕の力を緩めた。急に気道に流れ込んできた酸素に咳き込みながら、新羅は視線を背後へと移す。
セルティは柔らかな空気をまとってそこにたたずんでいた。首が無いにもかかわらず、あるとするならばゆるやかな笑みを浮かべているであろうことが誰の目にもハッキリとわかっただろう。
セルティは素早くPDAに文字を打ち込むと、一瞬だけ新羅に見せて放り投げた。
『安心しろ、介抱してやる』
抱きしめた身体は、ゆっくりとソファに沈んでいった。
Who's gonne be a king?
100411
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無理矢理(←)終わりました王様ゲーム・・・!なんだか新セルエンドになってしまいましたねあれ・・・!?
番外編で他二組のその後をつなげていく予定ですので、またしばらくかかりますがすみません・・・!