フラジオレット | ナノ




※臨→静←幽











「兄さん」
「あ、幽」



 いつもの池袋でいつも通りにシズちゃんとケンカしてたら邪魔が入った。ふいに曲がり角の向こうから現れたそいつは、いとも容易く彼の視線を奪っていく。もちろん、俺は気に入らなかった。だから、どうにかしてシズちゃんを、弟君を驚かせてみたかった。



「…よそ見なんかしてると、」



 得意の妖怪かまいたちごっこ(俺命名の全力ダッシュのことなんだけど、)で瞬時にシズちゃんの懐まで潜り込むと、俺はわざと音を立ててキスをした。もちろん、唇に。
 すぐにシズちゃんを解放して、俺は弟君を見て笑う。視界の端でシズちゃんが青ざめながら「何しやがる!」と言って、必死で唇をシャツの袖口で拭っているのが見えた。もう、照れ屋さん!

 …でも弟君の表情は読めなかった。

 ふい、と視線は彼のほうからそらされた。それからシズちゃんのシャツの袖を控えめに引っ張る。



「兄さん」
「っ何だかすか、」



 ちゅ。


 弟君がシズちゃんにキスをしていた。まるで俺がしたみたいに。
 困惑の表情のまま羞恥で顔を真っ赤にしているシズちゃんの唇に、キザったらしくその人差し指を当てては、彼はいけしゃあしゃあとこんなことを言った。





「消毒」





 人差し指に邪魔されてシズちゃんは未だ物言えぬまま真っ赤な顔をしている。そんなシズちゃんもそそるんだけど、あぁひとつ気に入らないのはその人差し指が俺のじゃないってことかな。



「…上等だよ、受けて立とう」






 そう言った後うっかり弟君にナイフの切っ先を向けたばっかりに、コンマ一秒で正気に戻ったシズちゃんに俺は二つ向こうの通りまで吹っ飛ばされてしまった。




















宣戦布告、上等。





100304

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臨→静←幽で三つ巴。若干幽優勢で臨也が不憫です(笑)シズちゃんは鈍すぎて気付いてないとか(笑)










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