※幽静
「静雄、静雄」
「・・・・・」
「静雄」
「なぁ、幽」
はぁ、と深い溜息を吐き出して俺が幽を見上げると、なに?と相変わらずの無表情で首をかしげた。さっきから何度も俺の座っているソファの周りをうろついては俺の名前を呼んでいる幽。いや、正確には、呼んでいるのは俺の名前ではないのだが。
「その名前、変えないのか」
「どうして?」
「どうしてって、」
ややこしいだろ、そう控えめに言えば、今度はきょとんとした顔――はたから見ればそれは先ほどと変わらぬ無表情だっただろうが――で首をかしげた。それからしばらく考えるようなそぶりを見せて、顔を上げると幽は、変えないよ、と呟く。
「だって、一番好きな名前を付けたんだ」
これ以上いい名前、俺には思いつけないよ。
そう言って、笑った。俺は膝の上で眠る独尊丸を眺めながら、あの気分屋もこうであったらいいのに、と頬を熱くしながら思うのだった。
(飼い猫の名前一つに動揺するだなんて、どうかしてる)
二番目の名前
110907
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二番目の名前というのは幽くんが新しく飼い始めた猫ちゃん(not独尊丸)のことです。もちろん一番は静雄さん(本体/笑)ですよ!