※来神片思い
どうしてと問われればなんとなくとしか答えようがないのだが、今の僕にはおそらく世界で一番不幸で不毛なベクトルが見えている。
「ドータチン、放課後一緒に遊ぼうよー」
「俺はかまわねぇが…静雄は?」
「チッ…ノミ蟲と一緒かよ…」
こうして目の前でごく当たり前な高校生らしい会話を繰り広げる僕の友人達こそ、狂おしき悲劇の舞台役者。僕たちは変わり者同士で、友人と呼べる友人もあまりいなかったものだから、こうして長い間寄り添いあっているうちに友人以上の情が生まれてきてしまったのだろう。そのくせ呼ばれた自分の名に親しみ以上の恋しさが込められていることに誰一人気付きやしないのだから、友人とは滑稽だ。僕?僕の愛は海誓山盟、たった一人の人――といっても彼女は人ではないのだけれど――に捧げられてしまっているからね。そんな不毛な関係に陥る必要も、またその可能性も皆無だった。
「で、結局どこ行くの?」
相変わらず口論を続ける彼らにそう、僕が何も知らないような笑みで問いかけると、彼らはきまって各々の矢印のその先をちらりと見やる。そうして少しためらうように唇を震わせたあと、
「「「新羅の家」」」
と答えるのだ。微妙な均衡関係にある三人は、毎度毎度複雑な見えざる痴情とは関係のない僕の名前を出すのだ。僕は笑ってそれを承諾すると、鞄を手に立ち上がり自分の家まで先頭を歩く。
「ていうかさー、シズちゃんまたコントローラー壊したりしないでよねー」
「…臨也、それはお前が煽るからだろ」
「もっと言ってやってくれ、門田」
ぐるぐると終わらない不毛な関係を続ける三人の声を背に、僕はまた薄く笑みをこぼす。
「ほらみんな、早く入りなよ」
僕はポケットから鍵を取り出して、ガチャリと玄関の扉を開けた。こうしてそんな三人を自宅に招き入れる僕が、実のところ一番友人として滑稽なのかもしれないな。
(干渉も後押しもしない、それが僕の優しさ)
友情と親切心の
比例性に関する考察
110807
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臨→門→静→臨というぐるぐる片思い。傍観者新羅はこの痛い関係を保つことが友人としての最良の選択だと思っているとかなんとか。