※来神臨→静
「生まれ変わったら鳥になりたい」
はぁ、と深い溜息をついてそんなことを言い出したのは、折原臨也、17歳。青空の下、黒と赤のコントラストが印象的な彼はいかにも厨ニびょ…いや、アンニュイに浸り世を憂う哲学者のごとく、そう言った。それを聞いているのか聞いていないのか、ともかく周りにいた三人は怪訝な顔を浮かべていた。
「…何言ってんだ、お前」
「ついに頭が沸いたみたいだね」
「げ、ピーマン入ってる」
上から順に門田、新羅、静雄。門田は手にした弁当から顔を上げ、新羅は手にした弁当をうっとりと見つめ、静雄は手にした弁当に入った野菜炒めのピーマンだけを器用に除けながら。まったくと言っていいほど話を聞いていなかった静雄は、臨也が溜息をついている間中見つめられていることに気づいていなかった。
「鳥と言えば、静雄、この間小鳥を拾ったって言ってたな」
「ん、あぁ、庭に迷い込んでたやつな」
門田が尋ねれば、静雄は除けたピーマンを門田の弁当箱に放り込みながらそう答えた。「好き嫌いするな」と苦い顔をしながらも結局そのピーマンたちを平らげていく門田はお人よし以外になんと名づければ良いのか。
「結構かわいいんだ、餌やると食いついてきて」
静雄はその様子を想像してか、顔を綻ばしながらそう言った。それを少し心配したような、微笑ましいような目で見ながら、門田は少し微笑む。そしてその雰囲気に水を差すように付け加えたのが、新羅だった。
「鳥かぁ、ぜひとも一度解剖させて欲しいな」
「てめぇは二度と家に呼ばねぇ」
「そうしてくれ、小鳥のためにも」
ぎろりと、静雄と門田の鋭い視線ににらまれて、新羅はお手上げ、といったように両手を上げて溜息をついた。しかし冗談、というつもりはない様子の新羅に、静雄は先ほどの発言を心に誓う。残念だ、とこぼす新羅の隣で、今まで黙っていた臨也が再度口を開いた。
「あーあ、生まれ変わったら鳥になりたい」
「そしてそれを俺が食う」
「やめとけ静雄、腹壊すぞ」
「その時はぜひとも僕に解剖させてよ」
さわやかな屋上の風に吹かれ、結局、あの発言の本当の意味を知っていたのは当人だけだった。
(君に愛される小鳥になりたい、なんて)
愛し愛され
110708
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小鳥がうらやましい臨也さん。静雄さんはともかく、新羅やドタチンなら彼の発言の意味に気づいてもよさそうなところですが(笑)
お題:LargoPot