私は悪魔らしい。
詳しく言えば私の死体から揮発した物質に憑依する悪魔。と、説明してもらったけど意味が分からなかった。
じゃあ憑依する前って一体何だったんだろう私という悪魔は。他の死体から揮発した物質にでも取り憑いていたのか?
それより死体から揮発した物質ってなんだ?リンとか?むずかしい。とりあえずどうでもいい。考えるのやーめた。


「では改めて紹介します。今回の研究に協力してくださる苗字名前さんです。みなさん拍手」


拍手は一人しかしてくれなかった。おいこらとんだ赤っ恥じゃねぇかよ。みんな気まずそうにしてるんですけどここまできたらもう笑えちゃうねうふふあはは。
現実逃避もそこそこに。私はとんでもない研究にモルモットとして協力することになってしまい、今、その研究員の方たちに自己紹介をしていた。といっても名前を言って頭を下げたくらいだ。
辛い日々が続きそうだ。なんとなく、ここの雰囲気で感じとることができた。怪しいにもほどがあるし、モルモットでしょ所詮。未来に希望はない。それでも未来があるだけ、ましなのかもしれない、なんてね。


「では今日はもう特に何もないのでゆっくり休んでください。あ、こちらがあなたの部屋です」


あ、部屋とかあるんだラッキー。沈んだ気持ちもちょっと上がったんだけど、甘かった。にやりと笑ううっとうしい笑顔、フェレスさんが私の部屋だと言って取り出したのはどこかの部屋の鍵…ではなかった。そうであってほしかった。


『なんすか。これ』
「位牌です」
『いやいやおかしいでしょ!絶対おかしい!』


何を言いますか。私の特注したスペシャルな位牌ですよ!って、位牌がどピンクとか有り得ない。いや位牌がピンクだっていうのがおかしいって言ってる訳じゃない。いやおかしいけども。私の部屋、マイルームがなんで位牌なんだよ。それって絶対おかしい。確実におかしい!いくら私が幽霊だからって馬鹿にしすぎだろこれは。


「お気に召しませんでした?」
『気に入るとかそういう問題じゃないですよね。もういいです適当に野宿します』


妥協したつもりなのに「だめです」と一刀両断。このクソ野郎。でも理由を聞けばもし事情を知らない祓魔師に祓われたりでもしたらどうするんですか。とわりとまともな返答を聞くことができた。
なるほど確かにそれは困る。ううむ、と悩んでいるとフェレスさんがほらほら言いながらどピンクの位牌を寄せ付けてきた。うぜぇ。大して仲良くもない友人から来る仲良しチェーンメールよりもうぜぇ。


『位牌は嫌です。だから私の視界に入れようとしないでください』
「なぜですか。わりと過ごしやすいかもしれませんよ」
『本気でそうお思いで』
「もちろん」


あんたは馬鹿だ。そう言ったらよく分からない呪文なようなものを唱えられて、すっごい半端じゃないくらい苦しくて痛いことになってしまったので泣く泣く承諾した。
位牌に住むってどういうことなのどうすればいいの。色々疑問に思ったけどなんか頑張ったら位牌の中の空間に入ることができた。私すごくないか。
位牌の中はなんというか、外見と同じく、ピンクだ。それに狭い。けど無限ぽい。どう言っていいかわかんないけど狭くて自分の姿も分かんないくらい暗い部屋にいる感じ。どこまでも先はありそうだけど、やっぱり狭い。これも頑張ったらどうにかなるかもしれないな。無理でした。


04.私の新居を紹介します



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