死者は甦らない。
昔、人間は死者を甦らそうと試みたけどそれは失敗に終わり、倫理的にも叶うことはなかった。今では研究すること自体が禁止されている死者の蘇生。だけど人間の欲は尽きることがない。
死者を甦らすことができないのなら、その魂に肉体を与え憑依させればいい。しかし死体では腐ってしまう。そこで考えたのが、ロボット。最先端の技術で作った人間そっくりのロボットに、憑依させればいいのだと人は考えた。
それは蘇生なんかではなく、ただの憑依。しかもその物体が人間ではないのなら、揚げ足を取ってるみたいだけど今の法では可能らしい。
しかしメフィスト・フェレスたちがこの研究を進めたのは何も死者との再会を喜ぶためではない。目的は武器。感情のあるロボットを生み出し、エクソシストにする。別にロボットに感情なんていらないのでは?その問いにメフィスト・フェレスはこう答えた。


「そんなの、おもしろくないじゃありませんか」


あくまで人間らしさは残しておく。それでロボットだと気付かれないように人間の中に溶け込ませる。毎年人員不足のこの職業、何が一番得策なのか。それはやっぱり文明に頼る他はない。


「あなたを何の説明もないままここに連れてきたのには反省してます。でもどうかお力を貸していただきたい」


これはゲームだ。そんな風に言われている気分になった。おもしろくない、なんて、そんな理由があったもんか。「まだ生きていられるようなものなんですよ」だけどその言葉はすごく魅力的で。それに私はどうせ死んでしまったんだ。成仏なんてどうするのか分からない。未練があるのかもしれない。実は心のどこかで私は死んでなんかないって思い込んでるのかもしれない。だって私にはこうして意思があって、体はないけど姿は持っているというか。何で死んだかも分からないわけだし、どうせ、これから何をしたらいいか分かんないんだし。

悪魔はにんまりと笑い満足げに頷く。そう言ってくれると信じていました苗字名前さん。そう言って私の手を握ってきた。何で私の名前を知ってんだろうとか気にはなったけど、この人ってなんか何でも知ってそうなのであえて追及はしないでおいた。
ていうか握手できちゃった。幽霊なのに。


03.墓ない者の選択肢



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