覚えてるのは、内側から見る海面。太陽の光。目に染みる海水。不十分な酸素。重たく動かない体。ノイズ。

ぶちんと弾けた、何かの音。




しばらく意識はなかった。私はただ呆然と波打ち際に立っていて、海を眺めている。身体中はびしょ濡れで、髪の毛もギシギシして、水分を吸った服はとても重たくて、吐きそうなくらい気分は悪かった。
私なにしてんだろうとようやく思考が回ってきたころにはもう辺りに人気は全くなかった。とにかく家に帰らなきゃ。濡れてて寒い。すごく寒い。よくまあこんな状態でボーッとできたなあ、なんて、一人で感心しながら、海に背を向けた。
でも私の足は動かなかった。今度は一瞬だけれど、また思考が停止した。ここは私の知ってる海岸じゃない。ここは、私が来た海じゃない。やっと気がついて、そして混乱した。
どうしてこんなところにいるのか考えて、記憶を辿る。私は海に来た。それは覚えてる。それは覚えてるんだけど、それで、それで、
死んだ。
なぜかは分からない覚えてない。でも確か私は溺れて、死んで、それで、ここにいて…


「ああ、案外早く見つかりましたね」


知らない声が聞こえた。本当に知らない声。周りに人なんていなかったからか、反射的に声のした方を振り向いた。そこにいた人の目は、確かに私を捉えている。変な格好、なんていうか、こう、もう変な格好としか言いようがないんだけど、コスプレみたいな格好をした男の人が、立っていた。


『…誰?』
「失敬。私はメフィスト・フェレス。正十字騎士團の名誉騎士です。早速ですが、一緒に来ていただきます」


ここからは記憶が途切れている。きっと何かされたに違いない。手刀をくらったとか、鳩尾殴られたとか。…それはないかもしれないけど、きっと何らかの方法で私は気絶をさせられた。
そして次に意識が戻ったとき、私は無機質な冷たい台の上。たくさんの怖そうな人たちに囲まれて、でもって歓声をあげられた。


01.スカイブルーによろしくね



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