頭の悪いバカ女だとか、尻軽女たどか、あいつらは私のことをそう言うけど、今さら反論することも億劫だし、別に、間違ってるとも思ってない。
だってかっこいい男は好きだし、キスもセックスも気持ちいいし、できたら、美形なんて言われてる人に抱かれたいなんて気持ちもあるし。
好きとか愛してるなんて所詮付属品みたいなものだよ。だけどそう思ってる自分が酷く愚かで悲しくて寂しい。そして虚しい。

現実的なんだと思う。きっと誰よりも、そう。
自分のことしか考えない。狡くてもかまわない。自分にプラスになるような人を選ぶ。結局は自分が一番大切なの。だから自分が一番満足できたら、それでいい。
媚売ることだってとても大切なこと。それは自分の価値を高めることにも繋がるのだから。社会に出ても役に立つのだし。

それに、寂しさをまぎらわすには愛だとか恋だとかがちょうどいいんだ。一度知ってしまえば離れられなくなる。満たされる感覚に襲われる。
陶酔。きっとそれだけの言葉で片付いてしまうのだろうけど。

つまり私が何を言いたいのかと言うと、簡単に股を開く。男好き。ミーハー。媚を売る。それって、いけないことなんですか?そこまでズタボロに、言われなきゃいけないことなんですか?
傷付かないって、君たちは思っているの?



「げ、雄一くんからメール」
「え、また?しつこくないそいつ」
「しつこい!受信拒否までしたのにアド変えやがった」
「あーあ。可哀想に」


ポチポチとスマホのキーボードを叩いていって、今度こそ、と、遠回しな言い方でもなく優しく包むこともなく、ただ一言、うざいと件名に叩き込むとあとは本文は空でメールを送った。
SNSで知り合ったこいつは中々の気持ち悪さで。もう、なんつーか、発言が。都合のいい相手ならまだよかったけど、そういうわけでもなくて。いい加減相手をするのも疲れてきたからもう受信拒否着信拒否してしまった。
会ったのは一回だけ。でもそれで付き合ってるみたいな錯覚に陥っちゃったらしくすごく面倒だった。


「可哀想なのは相手の方じゃなか?」
「に、仁王くん!」
「お前さんのこと本気やったんじゃろ」


ああ聞かれてたのか、厄介だ。でも私は一応仁王くんファンということで、弁解したり素直に謝ったりと良い意味での適当な対処をする。
ていうか、本気なもんか。一日メールしただけで好き!なんて私は信用してなんかない。私も似たようなもんだけど、本気なんて、そんなもの、あるわけないじゃない。つーか仁王くん、そいつのこと何も知らないくせに、よく断言できるよね。
仁王くんは軽蔑したみたいな、そんな目で私を見てきた。それにはまあ、精神的にはかなりくる。しかも結構怖い。最低じゃな。その言葉はぐっさり胸に突き刺さって、私は何も言うことができなかった。
仁王雅治。彼は一流ブランドだ。私がどうこう言える相手でもない。でもやっぱ、ブランドものとか、欲しいよなあ。背伸びしてでも手を伸ばしたい。


「だ、大丈夫?名前」
「うん。慣れてるから」


仁王くんが去ったあとはなんていうか、空気にギャップがありすぎて逆に落ち着く。仁王くんは私が嫌いだ。なぜって、私がミーハー女で尻軽で頭が悪いから、かな。何回か媚売ったし、同じクラスだから顔も名前も覚えられてるしね。
なんで仁王くんかと言うとだってあの人女付き合い酷そうじゃん。適当に媚売ってたら普通に抱いてくれそうだし。私が仁王くんのファンだなんて、所詮はそんな理由。
もはやアイドル部と化している我が校の男子テニス部はそりゃあもうお顔の綺麗な人ばっかり揃っていて、それもレギュラーね。女の子が騒ぎたいのも無理はないよ。かっこいい男は誰だって好きだ。私も好きだ。だから仁王くんは好きだ。顔が。


「…はあ」
「元気出せ。放課後アイス食べにいこ、な?」
「私はあんたが本気で羨ましいよ…」
「私はあんたが本気で心配だけどね」


私の一番仲の良い友達はテニス部にも男にもあまり興味がなくて、化粧っ気もあんまりないし、正反対な私たちがなんでこんなに仲が良いんだろうって、少し疑問に思ったりもする。
羨ましいよ。すごく。私もそんな性格で生まれてきたらよかったのに。


「だって寂しいんだもん……」
「わかってるわかってる。」


私がちゃんとわかってるよ。
こいつは有り得ないくらい、優しい。こんな弱いところ見せれるのは、こいつだけだ。泣きそうになってるところなんて誰にも見せれやしないからね。




――――――――――
意外な視点から。
そしていきなりのジャンル。
なんかテニス夢はミーハー女とか言い方悪いけど尻軽とかよく嫌われてるよなあって。でもそれこそ偏見なんじゃないかなあと思ったり。
色々考えた挙げ句文章にしてみると恐ろしいくらい難しかった。


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