変なくノ一と土井先生との出会い
くノ一要素あんまない







その日は、授業を終え私は学園長先生の命令で学園の近くで起きている戦の様子を見に行っていた。
戦はもう終盤。勝敗も目に見える程になっていた。
ただ、一つおかしいことがある。
今朝始まった戦なのにも関わらず、もう戦が終わってしまいそうになっていることだ。
いくら何でも早過ぎる。
たとえ、この戦が圧されている軍にとって負け戦だったとしてもだ。
そうこうしている内に圧されていた軍が白旗を上げた。
戦の終わりだった。


「これなら学園に被害が出ることはなさそうだな」


いくらおかしくとも、戦は戦。
終わったのなら安心だ。それに超したことはない。
学園長に報告をと私は踵を返す。
ああ、早く帰ってテストの採点をしなければ。
万年赤点の自分の生徒たちのことを思い出し、キリキリと胃が痛んだ。



***



「これよりクラス対抗マラソン大会を始める!」


それはいつものように学園長の突発的な思い付きだった。
マラソン大会をやるのはいい。しかしたまに教職員まで巻き込まれるからたまったものではない。
今回は私たち教職員は走る方ではなく監視に回された。
走るよりかは、ましな方ではある。
偶然か必然か、私の配置は昨日行ったばかりである戦場の近くだった。
通り道だと言ってもいい。
その道の傍にある木の上に登り気配を絶つ。それでも勘のいい上級生には気が付かれるのだが。

一人、二人と生徒たちが目の前を通り過ぎていき、遂に最後の一人、しんべヱがぜえぜえと息をしながら過ぎていった。
このマラソンは折り返しではなくぐるりと回るルートになっているから、私の役目はここで終わりになってしまった。
どうせならしんべヱと一緒に走るかと木から降り、丸い背中に声をかけようとした時だった。

赤ん坊の泣き声が、聞こえた。

こんな町から外れた山道に、赤ん坊の声?
少しだけ、ほんの少しだけ気になってその赤ん坊の泣き声の聞こえる方向を向いてみた。
泣き声は聞こえるものの、その姿は見えない。
そのうち親があやし始めるだろうと再びしんべヱに視線を戻してみるが、その泣き声は一向に止まない。

好奇心と、不審感。
他意はない。たったそれだけではあったが、私はその泣き声を辿ることにしてみた。



***


たどり着いた先にいたのは、泣きじゃくる赤ん坊と、一人の女性だった。
大きな木の下に座り込むその女性は、自分の傍でギャアギャアと泣きじゃくる赤ん坊を見向きもせずに遠くを眺めていた。
赤ん坊の泣き声はどんどん増す。
この女性が、母親?
それにしても赤子に対するこの態度はなんなんだ。
お腹が空いているか、おしめが汚れているか理由は沢山あるだろうに、確かめたりもしないし特別、あやすわけでもない。
呆然と女性とその赤ん坊を眺めていると、不意に女性と目があった。
私はギョッと目を見開いたが、その女性はまるで私がずっと見ていたのを知っていたかのように、眉一つ動かすこともなかった。


「…。」
「…。」


沈黙。
目が合ったままの、沈黙。
それが厳しいものと感じたのはいつぶりだっただろう。
何を言うわけでもない。言葉を交わすわけもなく、ただ泣き声だけが耳に響いていた。
ああ、こういう時は何を言えばいいんだろう。
心の中で、あー…と唸った後、私は口を開いた。


「な、泣いていますよ」


赤ん坊。
そう続けると、その人は「ああ…」とまるで忘れていたことを思い出した時のように声を漏らし、その赤ん坊を見遣った。
私も何かもっと気の利いた言葉を言えばいいのに。
いざという時の自分の語彙力に、少し嫌気がさした。


「泣いておるな」
「え?」
「見なくとも分かる。これほど泣き喚かれてはな」
「で、では何故…」


放っているんですか。
そう聞けばその人は考えるそぶりを見せた。
もしかして、赤ん坊のあやし方が分からないのだろうか。
それにしては、落ち着きすぎなような気はするが。
疑問に疑問が重なっていく。
しかしその答えは、いとも簡単にその人から導き出された。


「人間が泣いている時は、ただ傍にいてそっとしておいてやるのが礼儀だと聞いたことがある。違うのか?」


違うのかって。違うだろ。
いや、確かに間違いではない。
ただそれは赤ん坊の時の対処法ではない。わざと?それにしては、真剣な顔をしすぎている。
だから直感した。
ああ、この人は、人を、赤ん坊を知らないんだ、と。


「かしてください。私、子守は得意なんです」


気がつけばそう言って、その赤ん坊を抱き上げていた。
その時のその女性の顔といったら。
目を真ん丸くさせパチリと目を瞬かせる。
可愛らしい女性だと、思った。



――――――――――――――

そんな女の人はある城に飼われている最強くノ一で、戦に参加してて、戦はこの人が強すぎてすぐに終わってしまったのです。
機械のように無感情に忍務をこなすくノ一が、初めて赤ん坊を見て人の心が芽生えちゃったよ。
そんなときに半助登場だよって話。


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