「
いとこ以上、」
なあ、いとこって結婚できるらしいぞ
◇川遊び
……困った。
こういう時って、どうしたらいいんだろう……。
ちらりと正義の方を見れば、モリを構えて魚を追っている。
魚って……釣るんじゃないの?
芸能人じゃなくても本当にモリで突けるものなんだ……。
正義って凄い。
色んなことができる。
木も登れるし、走るのも早い。
泳ぐのも上手だし、魚まで突ける。
ちぇ。
オレも同い年なのに。
なんて、悠長なことを言っている場合じゃない。
オレは……その……おしっこがしたくて……困っている。
川遊びは初めてだ。
もしかしたら、小さい頃したことがあるのかも知れないけど。
覚えてない。
初めは水の冷たさに驚いたけど、体が慣れてしまえば気持ち良かった。
屋内のプールなんかとはぜんぜん違う。
上を見たら全部が空で、周りの緑はしっとりと暗くて、水がキラキラしていて。
ぼんやりしてるだけでも楽しい。
景色や、正義を見ながら、のんびり泳いでいたのまでは良かったんだけど。
……おしっこ。
出かける前に、杜萌おばちゃんに麦茶をいっぱい飲まされて。
多分そのせいかな。
川の水も冷たいし。
ああ、どうしよう……。
気になりだしたら、物凄くしたくなってきた……。
ぶるり、と体が震える。
ばあちゃんちに戻るまで、きっと我慢できない。
ここまでくるのに結構歩いたし……。
どうしよう……。
「勇気?」
「あっ……」
「どうした? 寒い? 一回あがる?」
正義に手首を捕まれて、顔を覗き込まれた。
同じ水の中にいるのに、何でだろう? 正義の手はあったかい。
ぷるり。
「……あ…………あ……」
あ……。
「でちゃった……」
「え……?」
「おしっこ……」
恥ずかしくて恥ずかしくて。
家に帰るまで正義の顔を見られなかった。
◇ ◇
沢の中でシッコなんて、皆してるし。
オレだっていつもしてるし。
気づかれたら、ヤベーキタネーとかって、騒いで笑ってるんだけど。
腰の辺りに、沢の水とは違う温度を感じた。
目の前には真っ赤になって、何か涙目でプルプルしてる勇気の顔があって。
その目がぎゅっと閉じて、眉毛の間がきゅっと寄って。
「あ……」ってちっちゃい声が、白い歯がちょっとだけのぞく口から聞こえて。
きたねえとか、そんなん、全く思わなかった。