いとこ以上、
それなら、両思いだろ?
◇夏祭り

格好良い。

なにあれ。
格好良いよ。


……ずるい。


汗をキラキラ光らせながら太鼓を叩く正義が格好良くて、太鼓の音がドコドキとオレの心臓を打つから、ドキドキして、ドキドキしすぎて、ちょっと辛い。

神楽が終わってもぼんやりしていたら、すっごい笑顔の正義が駆け寄ってきた。

「どう? 見てた? どうだった!!? どう!?」

「見てたよ。凄いね」

「マジ?」

「うん。……正義、凄く……格好良かった」

口に出すのが、恥ずかしくて、でも、伝えたくて。
ちょっと声が小さくなっちゃったけど、そう言ったら、正義が、うっしゃあああああ! ってガッポーズをするから、笑っちゃった。

大人の怒鳴り声に呼ばれて太鼓の片付けに戻る正義を見ながら、頑張って言って良かったなって思った。
あんなに喜んでくれるなんて。
格好良かったって、言えて良かった。

ふわりと体を包む風が心地いい。
興奮で熱くなった体を冷ましてくれる。

さっきから、オレずっと笑ってる気がする。



「氷食おうぜ! あちい!」

片付けから戻ってきた瞬間にそう言った正義は、ブルーハワイ。
オレはイチゴ。

神社から少し離れた、去年花火を見た所で、二人並んで座る。
ほんの少ししか離れてないのに、お祭りのざわめきが凄く遠くに聞こえる。
しゃくしゃくと氷を崩す小さな音が涼しげだ。

楽しくて、楽しくて。

こっちを見た正義に笑いかけると、正義も物凄い笑顔になった。

「勇気ぃー、ほらー」

「うっわ! 正義キモい!」

「へっへっへー」

真っ青に染まった舌を出して顔を近づけてくる正義を押し返す。

「勇気は?」

「何が?」

「舌見せろよ」

「えー」

意味の分からない要求に眉をしかめても、正義はへこたれることなく言い募ってくる。
ほら、早く、と両頬を摘まれて、観念してべーっと舌を出した。
ついでに顔も思い切り顰めて。

「……赤い……」

「……」




え?




何……?





……え?



 ◇  ◇



勇気の口から付きだされた舌が真っ赤に染まってる。
力が入っているのか、逆三角形のそれは、本当にイチゴみたいで。




うまそうだなって。

思った、から。


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テーマ「人外ファンタジー」
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