「
みんなのうたうたい」
わらいごえっていいな
弟→お父さん
カミングアウト
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「わ、は……は、は?」
お父さんの乾いた笑いが居た堪れない。
地面に落とした視線を持ち上げられずに、ミニスカートの裾をぎゅっと握り締めた。
泣きそう。
軽蔑された……かな?
やっぱり、こんな格好するんじゃなかった。
「ひっ! イッヒ! ヒ……ひぃー!」
僕の視線の先の床の上で、お兄さんが笑い転げてる。
笑いすぎだし。
涙出てるし。
でっかい体で転がるから、物凄く邪魔くさい。
睨み付けていると、それに気づいたお兄さんが近寄ってきた。
おまえ、下着どうしてんだよ、とスカートを引っ張るお兄さんの手から逃げて、お母さんの背中に隠れる。
「うふふふ……腐」
お母さん……最後、本性出ちゃってるから!
お父さん知らないんだから気をつけてよ!
「えっへっへー」
満足げに笑うお姉さんが、僕に向かって親指を立てて見せてきた。
いやいや、グッジョブの意味がわからん。
僕の性癖。
男の娘、というよりは、本気のガチで女の子になりたい。
多分、トランスジェンダー。
お母さんとお姉さんには、昔からバレてたんだけど。
カミングアウトです。
今僕は、女の子になってます。
お姉さんにお願いしたんだ。
嬉しい。
ふんわりしたウィッグをつけて。
春っぽいチュニックに、ミニスカート。
メイクも完璧。
嬉しい。
……んだけど。
お父さんの顔が見られない。
「あなた、この子昔からお父さん子だったでしょ? 認めてあげて」
そうなの。
僕は子供のころからお父さんと結婚したくって。
つい最近まで、本気で恋焦がれていたりした。
あ、今はね、僕、好きな人ができたの。
恋人ができたの。
だから、カミングアウト。
でもやっぱりお父さんのことは大好きだから。
嫌われたら、と思うと怖くて仕方ない。
そっとお父さんを見ると、なんだか泣きそうな顔で笑ってくれた。
僕もきっと同じ顔してるんだろうな。
「おほほ、ほ、ほ……」
わらいごえっていいな
たのしそうでさ
笑わないとやってらんない、よ。