「
みんなのうたうたい」
あのこはたあれ
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#童謡からの自分的小説
より転載。加筆。
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あのこはたあれ。
たれでしょね。
お窓にうつった影法師。
そう、──僕の影法師。
でもね?
冷たいガラスの表面を、そっと指先でなぞる。
美しく曲線を描く柳眉。
少し細められた涼しい目元。
泣き黒子。
ふっくらとした涙袋と、くっきりと刻まれた二重。
嫌味ではない程度に整った細い鼻梁。
ぽってりとした唇の間に白い歯が光る。
微かに持ち上がった口角。
若く。
健康で。
美しい。
若さゆえの勢いと熱さを、理知的な聡明さが危ういバランスで包み込んでいる。
好青年。
君は、僕だ。
僕、だよね?
ねえ?
なのに君はどうして笑っているんだろう?
僕はこんなに悲しいのに。
怒っているのに。
絶望しているのに。
なぜ笑っているの?
キラリキラリ。
剃刀の刃が綺羅めく光に目を細めると、君も眩しそうに微笑む。
チリチリ。
音を立てながら、剃刀が頬の上を滑る。
チリチリ。
少し伸びた髭に刃が引っかかる、微かな刺激。
苛立ちが募る。
なのに、ねえ?
なんで君は笑っているんだろうね?