「
みんなのうたうたい」
小さい秋見つけた
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#童謡からの自分的小説
より転載。加筆。
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誰かさんが
誰かさんが
誰かさんが
見つけた
小さい秋
小さい秋
小さい秋
「見ぃつけた」
にいっと歪められた唇の間から、鋭く尖った歯列が覗く。
品の良い顔がぱっくりと大きく裂けて、石榴色の内側が見えた。
どんな味がするんだろう。
やはり甘酸っぱいんだろうか。
不思議とそんなことを思う。
「あ……」
見上げる僕が、機能が失われて尚綺麗に輝く双眸の中で怯えた顔をしていた。
怖いのだろうか。
僕は。
鬼は、怖い。
それは、そうだろう。
でも、綺麗なんだ。
目をそらせないのは、怖いから、だけじゃなくて、魅せられたから。
その綺麗な瞳を見たいから。
この穢れた世界を映さないからこそ、その玻璃の様に澄んだ瞳は美しいんだろうか。
「ねえ?」
ささやかれた言葉。
小さな声。
優しい音色。
「つかまったら、アキも鬼だよ?」
首をかしげるその鬼は、その場から微動だにしない。
一歩踏み出せば、僕を捕らえられるのに。
尻餅をついたまま動けずにいる僕なんて、あっという間に捕らえられるはずなのに。
今、その口元に浮かぶのは微笑。
閉じた唇の向こうに飲み込む言葉が知りたい。
何を思って、そんな顔をしているのだろう。
僕がもし、踏み出したら。
あなたに向かって踏み出したら。
どんな顔をするんだろう?
不思議と、そんなことを思った。