「
みんなのうたうたい」
みかんの花咲く丘
Twitter
#童謡からの自分的小説
より転載。加筆。
--------------------
みかんの花が咲いている。
思い出の道。
この丘の道……何度も二人で散歩したね。
白い花の下思いが通じ合い。
初めてのキス。
君の向こうにその白い花が見えて。
「ん? どうかした」
「え?」
「ぼんやりしてる」
そう。
最近はずいぶんと頭がぼんやりしている。
その事を君がどう思っているんだろうと考えると、少し怖い
「ふふ。あのね」
「うん」
「初めてした日にね、ふふ、おんぶしてもらったなって」
「……ああ」
その時も、あの白い花が咲いていたんだよ。
君は覚えているかな。
幸せな、幸せな思い出。
青い空の下。
白くけぶるように咲くあの花の実が結ぶ頃。
僕は君とさよならをしているだろう。
泣かないで、なんて言えない。
悲しんで?
寂しがって?
今僕が味わっている、心から死んで行っているようなこの痛みを。
薬で散らすことすらできないその痛みを。
ほんの少しだけ、味わって欲しいと思う。
でも、少しでいいんだ。
幸せに、なって欲しい。
誰よりも幸せに。
こんなに素敵な君なんだから。
生まれ変わったらあの木になって君を見守もろう。
幸せな君を、自らの白い花で祝福しよう。
大好きな君を
《花言葉:花嫁の喜び》