「
とりとめのない小品」
初キスを語る男の話
一方向の会話文
バーのカウンター席
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あー。
高1、かな。
そりゃガチだって。
保育園の時〜とか、母親と〜とか言ったらシラケるだろ?
車ん中。
おー鋭い。
そう、年上。
別に、付き合ってたわけじゃねーし。
俺は。
そんな気、なかったし。
いやさ、ぶっちゃけ、ヒイキされるのって、気持ちよくね?
ふふ。
その頃ってさ割とナヤミオオキ年頃じゃん?
年上からさ、好きとか言われて。
調子のるって。
それ断ってヒイキしてもらえなくなったらさ。
ヤじゃん。
そうそう。
ヤな奴よ、俺。
でもさ、その人だってイイ歳してガキ相手に何してんのって話でしょ。
……11。
かな。
あー。
中学ん時の先生。
数学。
美人、じゃねぇよ。
全然。
はっ!
ばーか。
夢見てんじゃねぇよ。
残念でした。
チビでぷよぷよで。
眼鏡でさ。
その奥のちっせえ目がおどおどしてて。
生徒からは超バカにされてたし。
ははっ!
だろ?
さあ。
どこも。
だーかーらー、言ったろ。
そんな気なかったんだって、俺には。
メール教えてくれてさ。
飯とか遊びに連れてってくれてさ。
まあ、正直そんな感じ。
高1だぜ?
小遣いなんて購買のパンに消えてくし。
んー。
何か新鮮だったんだよね。
俺周りに年上とかあんまりいなかったから。
甘やかしてくれてさ。
何かそわそわして落ち着かなかったんだけど、多分、嬉しかったんだろーなーって思う。
兄ちゃんとかいたらこんな感じかなって。
「は」?
え……。
あ、いや。
うわ。
聞かなかったことに……。
あー。
無理?
あー。
おまえ……笑ってんじゃねーよ。
だーかーら、その気なかったっつってんの。
告られて、あーなんつーの?
友達以上恋人未満でオナシャスて言ったわけだわ。
うっせ。
チンコ付いとるわ。
で、何もしねえとか言うの信じてたのにされたんだよ。
キス。
あー。
うん、俺も思う。
そんなアホはびびって逃げたしたとさ。
それから会ってねーよ。
いや、でも、はじめから舌突っ込んでくんのはねーだろ。
笑ってろよ。
あ?
さあね。
はっ。
なに、お前。
誘ってんの?
さあ。
逃げ出したら、どうする?
なんて。
今じゃ11歳くらい、大した差じゃねーよ。
な?