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とりとめのない小品

殿とお鷹
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お殿様とお小姓さん
コミカル? セクハラ風。あれ? お殿様イケオジの予定だったのにごめんなさい。
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 豊月のお屋敷は荘厳な武家造り。然りとて今日も騒がしい。ほうら、ドカドカ足音が聞こえる。あの重低音は殿様のお声じゃなかろうか。

「まったく、おタカがしつこい所為で、朝っぱらからドロドロじゃ」

 風呂じゃ風呂じゃと騒ぐ美声に、なんと言っているかは分からぬ高い声が重なる。
 いつもの二重奏。
 まっこと平和な豊月よ。

「なんじゃ、おタカが世話をせぬのか」
「この者の役目を奪わないで下さいませ。わたくしはこちらで控えております」
「おうおう、冷たいのう。先刻まではあんなに縋り付いて来おったに」

 湯帷子の殿様が送った流し目は、つんと上向いた小姓の鼻に跳ね除けられる。
 ついでに尖った唇は、鼻と高さを競うよう。

「明日こそは一本いただきまする」
「やあ、面白う無い。のう、おタカも一緒せぬか」
「お許しを」

 真白な小姓の、細い首に張り付くは、妖しく光る緑のほつれ毛。匂い立つその色香を人目から隠そうと願うとは、殿様も人の子か。
 頑固者よ、と呟いて湯に向かった殿様の口がにんまり弧を描く。

「……あ! あ、おやめ……くだ、ひあ、あぁあ…」
「薹が立っておるが悪く無い」
「っ殿! 嫌がっております」
「おお、嫌か。否、この様子では喜んでいよう? どうじゃ、悦いか」
「あひっ……ん、あ、ああ」
「…………殿が、悦いか、と……お尋ねじゃ」
「っは、よひ……ぃですっ。っあ、や、あ……」

 ぎりり、と歯を噛みしめる痛ましい音が殿様の耳を楽しませる。何と年甲斐のない殿様か。

「のう、おタカ」
「は」
「この者の名は何と申す」
「っ!」

 唇を噛みしめて、膝の上、きつく握った拳を睨む小姓には、殿様の視線の先は計り知れない。

「のう、おタカ」

 舌舐めずりした殿様が、猫なで声で小姓を呼ばう。

「おタカ、おタカよ」

「儂の可愛い鷹丸や」

「のう、鷹丸や」


 まっこと平和な豊月よ。


 顔を赤らめた青年が走り去った後には、何を言っているのか分からぬ高い声が湯の音に重なった。ほんのり色づいたようにも見える湯気が、秋の高い空に立ち上る。

「爺の癖に!」
「なんとも可愛い事を。まだ足りぬか」

 減らず口も薄い舌が作り出したとあれば、干菓子のように甘いもの。殿様の目尻も皺を刻んで、硬い指先が柔肌の上を滑る。

「っや、あ……ぁん!」
「ほれ、一本、欲しいのだろう?」

 殿様秘蔵の逸物が、小姓のまろい尻をつついた。

「こンの、助平爺イ!!」



 豊月のお屋敷は、今日も今日とて騒がしい。

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殿様は爺言われてますが40前ですよ。

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