「
とりとめのない小品」
ついてる男の話
ツイッタータグ企画。石嶋様にシチュ「ホラー」をいただいて。短編とのことでしたが、SSになりました。
これはホラー?
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その日の昼、ローカルテレビのニュースで一人の少年の死が報じられた。登校中、交差点でトラックと接触。意識不明の重体で病院へ搬送されたが、その後死亡が確認された。事故と自殺の両面で捜査されていると、無表情のキャスターが告げた。
「こんな事になるくらいなら、学校なんて行かなくて良かったの。私が悪かったわ! 転校までさせたのに、どうして! イジメの加害者が憎い。幸也と同じ目にあえばいいんだわ! なんでウチの子がこんな目に……!」
母親は咽び泣いた。
「とても優秀な生徒でした。残念でなりません。イジメの事実は確認できておりません」
少年が以前通っていた学校は弔意を述べた。
「ご両親には、暴行としての立件は極めて難しいと説明しました。当時の捜査では過失傷害以上のウラは取れていません。イジメの有無に関してはこちらでは分かりかねます」
当局担当者は報告を上げた。
「男子が幸也君に嫌がらせしてました!」
「物を隠したり、わざと無視したりして!」
「ひどいことしてました」
元同級生の女生徒は糾弾した。
「本当に事故なのか。前日の幸也の日記に『忘れるなんて許さない』と一言だけ。……私達には会話が足らなかった。あの子が何を思っていたのか、分からない」
父親は口を噤んだ。
「変な奴だったし……」
「頭良かったらしーけど、あんま喋らねーし、ボーッとしててさ」
「金持ちだからつってさー、俺らんことバカにしてたんじゃね?」
元同級生の男子生徒は目元を赤くした。
「以前から本人に聞き取りをしながら観察していました。何より幸也くん自身がいじめではないと笑っていまして。あの件の後、お母様との話し合いは持てずじまいです……」
元担任教師は鹿爪らしく口を引き結んだ。
「あれ、事故です。転びそうになった幸也が前にいた子を急に掴んで。だからびっくりして振り払って、そしたら幸也が怪我しちゃったんです。わざとじゃないですよ。いじめ? うーん、物を隠されたりしてましたけど、なんかゲームみたな。隠すグループと探すグループと別れて。……みんな幸也に構って欲しかったんじゃないかなあ」
元同級生のクラス委員長はうっすらと微笑んだ。
君が好き。
君が好き。
忘れるなんて、許さない。
離れても、僕たちは変わらない。
そう言って欲しかったのに、どうして君は僕を諦めてしまうの。
許さない。
だから、ずっと一緒だよ。
これで、ずっと一緒だね。
忘れるなんて、許さない。
君が、好き。
──少年は耳元で囁く。