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ぼくらのテリトリイ



園芸部変人部長×男前後輩
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温室の中は緑の濃い匂いで満ちている。

「先輩、お茶をお持ちしました」

「フム、ご苦労だね」

三角巾でマスクをした鳥羽が、目の前の鉢から目を離すことなく答えた。
慣れたもので、そんな鳥羽の様子には構うことなく、テーブルの上を片付けていく。

「植野くん、見たまえ」

「はい?」

「素晴らしいと思わんかね、この双葉の形!」

「……」

「色と良い、この角度といい、理想的だ!」

頬を赤く染めて、目を潤ませる様子は、はっとするほど美しい。
陶磁器の人形のような造作は文句なく、美形。
けれども変態だ。

「あああ、もう、堪らないよ」

切なげにため息を漏らす彼の下半身は、多分、今、のっぴきならない状況になっているのだろう。
なんて残念な人なんだ、と心の中でため息を漏らす。

「先輩、冷めないうちにどうぞ」

「……フム」

顔と鉢の間にカップを割り込ませると、以外にも素直に頷いた。

手袋を外した美しい白い手がカップを持ち上げる仕種は、映画のワンシーンのように優雅だ。
植野は無骨な手で、鳥羽の三角巾をそっと外してやった。
多分、放って置いたらこの人は、マスクの上から紅茶を飲む。

「棚の茶葉を使ったかい?」

芳醇な香りに微笑んだ鳥羽が植野を見上げた。

「ええ、いけませんでしたか?」

「いや、いけなくはない。いいのだ。いいのだよ。ふふふ」

嬉しそうに笑いながらカップを口に運ぶ鳥羽の正面に座って、植野も紅茶を頂く。
うん、美味しい。

「植野くん、今日はね、シェドゥーブルの脇蕾を間引こうね」

「シェドゥーブル?」

「そこにある薔薇さ。ふふ。是非君にやってもらいたいんだ」

「はあ? 構いませんが」

にまにまと嬉しそうに笑う変態に、首を傾げる。
鳥羽の視線を辿ると、艶の良い葉がついたバラが数株植えられていた。

「ほら、蕾がいくつかついているの、見えるかい?」

「ええ、……ああ。わかります」

「彼らは、その身を綻ばせることなく、君のその手に手折られるんだよ」

「……」

「ふふ。興奮しないかい? 硬く閉じた蕾。誰に愛でられる事もなく、大輪の花の影に摘み取られる」

「……先輩」

「ふふふ。愛らしいだろう?」

テーブルの上の植野の手に、鳥羽の白い手が重ねられる。
するりと撫でられるその意図するところを察して、ザワリと腰の奥が疼く。

「代わりに、君の蕾は、僕が綻ばせて、愛でて、それから摘み取るのだからね」

「代わりにの意味がわかりません」

「ふふふ。愛らしいね」

嬉しそうに笑う鳥羽に気分が浮つく自分も十分変態だと、植野は心の中でため息をついた。


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chef doeuvre:傑作
結婚式などに使われるバラだそうです。

植物にしか興味がない鳥羽先輩と、そんな先輩を好きなってしまった植野君。
念願かなって両思いになったけど、変態はやっぱり変態。
美人×男前。
リバもありかな、と。


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