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労働讃歌



主任×途中入社
友達以上の芽生え
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10時のコーヒーブレイク。
天気の良い日は屋外にある自販機に行く。
俺のお気に入りの缶コーヒーは何故だか屋内の自販機に置いてない。
嫌がらせか?

ま、外の空気を吸うのも悪くない。


それにしても良い天気。
コーヒーが美味い。


「っちゃん! やまもっちゃーん!」

社屋から両手をブンブン振り回しながら騒々しさの固まりが走り寄ってきた。

「池やん、ご機嫌じゃん?」

「そりゃもー。ふふー、じゃーん」

にこにこ笑いながら差し出した池田の手の中には、真新しい社員証。
首に下げたストラップがピンと張る。
そこまでしなくても見えるのにとおかしさをかみころしながらのぞき込むと、緊張した面もちの写真は意外と写りが良い。

「お、写真のがイイ男じゃん」

「あ、なになに? 俺の魅力に気付いちゃった?」

「言うねー」

吹き出しながら自販機にコインを入れる。

「いやあ、主任に誉められたら、嬉しくてちびっちゃうよ」

「頻尿には早いべ。ま、研修期間お疲れだったよな。正社員、おめでとさん」

ささやかなお祝いにぽいっとコーヒーを投げてやる。
池田はいつもこの銘柄の微糖だ。
初対面から3ヶ月しか経っていないが、色々覚えてしまった。


新入社員と主任。
立場は違えど、同い年と分かるとあっという間に距離は縮まった。
お互い、独り者のお調子者。
話していると笑いが絶えない。

「あっわ、わっ! と、と」

「あ、ドジ」

投げた缶がタイミング悪く指に弾かれてコンクリートの地面で、クワンと音を立てた。

「っと」

「たく……」

ちょうど二人の真ん中に転がった缶に手を伸ばすと、同時に勢いよく屈んだ池田とぶつかりそうになる。

「ぅを」

「わわ」

危なかった。

池田の肩を両手で押して、何とか事故は免れる。
見合わせた顔の下で、二人の社員証が触れ合ってかしゃりと軽い音をたてた。

「あー」

急に声をあげた池田に首を傾げる。

「ちゅーしちゃったー」

「は……ア?」

「社員証。手の早い奴だ」

口を尖らせた池田が社員証の自らの写真にデコピンする。
目を見開いた俺に視線を寄越すとニヤリと白い歯を見せた。

「……ハ、はっ! ……ひどい、ファーストキスなのよ」

「なにぃっ! 許せんっ」

「はっ! あははっ」

笑いながら立ち上がると飲み終えていた缶をゴミ箱に入れる。
池田と正面から見つめあうのが何となく居心地悪くて、逸らした視線をごまかすためのアクション。
変に思われなかったろうか。

ざわざわと、気持ちが落ち着かない。



何だ?
どうした?
俺。

無意識に社員証のストラップを弄んでいた。


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天然タラシのいけやん。

やまもっちゃんが避けるようになる→池やん理由が分からず追いかける→追い詰められて逆ギレ告白→驚く池やん。「あ、でもイケるかも」逆に溺愛化

て感じがいいと思います。


二人は30歳前半くらいです。
主任攻な筈ですが、いやはや。
なさ攻になりそうです。


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