「
労働讃歌」
囮
美形班長×ちびっ子部下
女装
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数メートル後ろ。
俺の歩みにぴったりと付き従っていた足音がぱたりと消えた。
「…………っ!」
背後の気配に神経を尖らせていた俺の二の腕が、右手の狭い路地から伸びてきた手に捕まった。
来た!
ぐっと血圧が上がる。
強く引っ張られて傾きかけた体を立て直す。
左手で男の腕を掴むと、くるりと捻る。
ぐっと押さえつければ、相手の体が離れて……
「う……あァっ!!?」
何故か自分の体が宙に浮いていた。
反射的に受身を取るが、思ったような強い衝撃はなく、ふわりと背中が地面に付く。
「な……」
「こんな短いスカート、はしたないね」
言葉に詰まった俺の腹の上に、男が跨り、ニヤニヤと見下ろす。
むき出しの足を撫でられて、びくりと体が強張った。
外気で冷えた腿に暖かなてのひらが触れると、ジンジンと痺れが足の付け根まで這い上がる。
暴れる俺の動きをいなしながら、内腿を這い上がっていった手が下着に触れた。
「あれ、ブリーフ? 今日はボクサーじゃないんだ?」
「スカート、みじかいからっ」
「ふーん、どうせなら下着も女物にすればいいの、に……くふ……」
「しませんよ? しませんからね?」
何かを思いついたように怪しい笑顔を浮かべる上司に、慌てて首を振る。
「大体、何で俺が……。美人なんですから、班長がやってくださいよ」
「んー? 何でって、言わせんなよ。身長に決まってんだろ」
「ぐふ」
意外とダメージのでかい攻撃に押し黙るしかない。
「あとは、オレが見たかったから?」
「ァ! ちょ……っと、ヤっ、はん、ちょ……どこ手入れて、ン……」
下着の足ぐりから進入した手が、直接俺の分身をぎゅっと握り締めるから、変な声が出る。
ってか、ここ、天下の往来なんだけど。
軽犯罪だよな?
「もう、そんな顔して、美人とか褒めるから、我慢できないでしょ」
そんな顔って、どんな顔だよ。
「も……はん、ちょ。ダメ……」
「あはっ、真っ赤。かわいー」
にやりと笑う班長の顔がイケメン過ぎて、直視できない。
ずくずくと腰が疼く。
流されてるぞ、俺。
「ちょ……! 捜査! 捜査中ですから!!」
「あ、痴漢ね、捕まってたって」
「は?」
「一昨日、隣町でアゲた盗撮犯が、こっちのヤマもゲロったって。さっき」
「はあああ??」
じゃあ何の為に、俺は今、女装なんて恥ずかしい真似した上に、上司にイタズラされて、野外でのっぴきならない状況になってんだ……?
「って事で、お疲れ様。おまえは直帰でOKだから。──俺ん家に」
「ひ……ぁ…………」
顔に触れそうな位置で動く唇がくすぐったくて首を竦める。
……痴漢、許すまじ!
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囮捜査ってやつですね。
現実ではそんな捜査することなんて殆どないでしょうが(*´σー`)
ファンタジー。
部下は女装が死ぬほど似合わないとかでいいと思います。
やればやるほど怪物になる。
恥ずかしがる部下を見たくて、班長が人員配置したとか。
でも、その真っ赤な顔を他の奴にも見せてるのが気に入らなくて、スイッチ入っちゃったとか。
そんなS気な上司に溺愛される部下君(剣道以外の武術はちょっと苦手)。