「
ワンドロ」
休日の君も
第31回お題
『休日の君』
『ドライブ』
『落ち込まないで』
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歯で軽く噛んで。唇で挟んで。感触を楽しんでいた柔らかな唇が、最初は、と語り出した。当然逃げられたようになり、ムッと睨みつける。すると、すっと目をそらされるから、面白くない。
「あんまり見ないでー」
なんなんだ。
真っ赤に染まった顔の片側を自分の手のひらで隠して、うううと唸る三輪をじっと見つめる。
「少しでも仲良くなれたらなって」
「友達になってください?」
「そう、俺、超頑張ったよね!」
たまに気配を感じるだけだった噂の隣人。三輪の突撃はなかなか印象的だった。だからこそ、俺の中でわだかまる。
「お友達とすること、じゃ、っ、ねーよな」
三輪が求めているのは友達。
おまえは友達とこんなことするのか。
「っん、は、あ、友達に」
「はっ、気持ちい?」
握り込んだ二つのペニスを擦り付けるように動かせば、三輪が首肯してトロンと微笑む。エロい顔。やっぱり唇に噛み付いてやりたい。
「友達にって、嘘だよ」
「なにそれ」
「あれ、んー? 嘘になった、かな? とにかくねー、松浦くんと知り合いたくて」
「イケメンだから?」
事あるごとに三輪が繰り返す言葉で皮肉れば、目の前の顔が大真面目に頷いた。
「この世の奇跡だよね! ホント綺麗。ずっと、見てたいって思って」
「この顔、ね」
「独り占めしたくなっちゃって。休みの度に誘ってさー」
「俺様の運転でドライブ?」
「だって俺、運転苦手だもん……」
もん、とか口を尖らせて見せても可愛くない。なんなんだ。噛みつけと誘ってるんだろうか。
「アッ、乳首、ダメ」
「へえ」
「やあーん、いじわるー」
ダメと言われて止める男がどこにいる。
三輪の胡座に脚を跨がせて、逃げないように押さえつける。俺は背中の壁にもたれれば、酔っ払いでも楽に体を起こしていられた。
向かい合わせの顔は息がかかる程近い。
お互いの片手は競うように二人のペニスを纏めて掴み、もう片方の手で相手を弄る。
触りたいだけ触っていい。好きなところを、好きなだけ。その言葉通りに触れる。ずっと、触りたくて仕方がなかったこの体に。
ああ、頭に血がのぼる。
「この顔も、口が悪いところも、面倒見がいいところも、ぜーんぶ独り占めしたくなっちゃって」
「面倒見なんてよくない」
またまたー、と三輪は笑うが、本当だ。面倒見がいいなんて三輪以外に言われたことはない。
「俺さー友達って、よくわかんなくって」
「ああ」
「距離感? なにがフツーとかさ。あ、これおかしいかなって。怖くなって。避けちゃった」
「へえ」
「休日の君も、平日の夜の君も、仕事してる君だって、全部独り占めしたくなって、おかしいよね?」
たぶん。
たぶんそれは、友達とは言わない。
俺も友達なんてよくわからないけど、それは、たぶん違う。
「俺は友達なんて思ったことねーよ」
「!」
だって、初めから、初めて話したあの時から、おかしかったんだ。お前が設定した「友達」なんて言うブレーキがなければ事故を起こしそうなくらい、初めからおかしかった。
「ずっと、こうしたかった」
「っあ、あ。あ。あ、ダメ、アっ」
ちゃんと背筋がついた広い背中を抱き寄せて、首筋に顔を埋める。汗臭くて、愛しいそこを食みながら、手の中で飛び跳ねる三輪ペニスを扱く。ピクピクしていたそこは、割と呆気なく大きく脈打って、先端からトロリと白濁を垂らした。
「いっ、」
「イけたな」
「いっ、」
「酔っ払いでもイけるんじゃん」
「イケメン滅べ!!!」
わあーっと泣き真似をしてみせる三輪が煩い。自分の精液がついた手で顔を覆って、ヒイッと今度は本気で泣きが入ったままティッシュを探して騒いでいる。
いつもはこんなに早くないのに。と落ち込んで布団に顔を埋める三輪の脇腹を蹴り飛ばしてやった。
落ち込んでられても困る。
「暴力反対」
「俺様はまだイってねーよ」
触りたいだけ触っていい。
なあ、そう言ったよな?
まだだ。まだ俺は満足していない。どれだけ触れば満足するんだか分からないけれど。
朝はまだ来ない。