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可愛い尻尾が見えてるよ?



女衒→新造
妄執り
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パタパタと廊下を軽い足音が近づいてきた。

「旦那ア、入ってもよろしゅうござんすか?」

「アア、かまわねエよ」

可愛らしいこの声は紋黄の禿だ。
オイラが買って来た可愛い子。
この子も磨けば、将来お職も夢じゃないだろう。

「主殿がお呼びでござんす」

「オウ、わかった」

この廓の主はオイラの馴染みだ。
居候の代りにと女衒を請け負っている。
その仕事が忙しくて、この部屋で過ごせる時の方が短いってのがちょいと解せねエが。

「百舌、早く来ないかい」

「何だい、今行くところじゃねエか。せっかちな野郎ダね」

煙管を始末していると、噂の主がひょいと顔をのぞかせた。
いつになく興奮した様子の主に、何事かと首をかしげてみせる。

「百舌よ、繭がね、真白が繭から孵ったよ」

「!!」

……オイラとしたことが、煙草盆をひっくり返しそうになって慌てた。
面白そうにこちらを見る主の顔が気に入らない。

「……会えるのかい」

「どうするかね。おまえ、我慢できるかい?」

「はっ! オイラを誰だと思ってるんだい」

啖呵を切る声が震える。
細胞の一つ一つがざわざわと喜んでいるようだ。

「まあ、おまえが水揚げするという約束だからね。全く、よくもまあ見抜いたよ。おまえの目にはあきれる」

「だから言ったろ、極上だとよ」

「こんな約束するんじゃなかった……もったいない」

「へっ。様アねえな」


真白を見つけた時、稲妻に打たれたような衝撃を受けた。
これは化ける。
確実に、化ける。


店に連れ帰った時の、主を始め皆の反応は傑作だ。
返して来いとまで言う奴もいた。
確かに、見た目は田舎臭いし動作も不器用で、長所といったら性格が素直なところくらい。
渋る主を口説き落として、何とか郭に置かせた。
その時、水揚げの約束まで取り付けた。
花代は払う、と言えば客が付く筈もないと思ったのか、二つ返事に承諾した主に心の中では笑いが止まらなかった。


オイラは女衒だ。
どんなに魅力的でも、商品に惑わされやしない。


だが、真白は別だ。


禿としてすら勤まらないほど不器量な真白が、炊事洗濯を一生懸命こなすのを見ているのが楽しい。
苛められていやしないか、怪我なぞしてやしないか。
事あるごとに呼び出しては菓子をやる。
甘い菓子に蕩けた真白の顔を見るのが何よりの楽しみだった。

程なくして、真白は、その名の通り、真っ白な繭を作った。

こっそりと部屋に忍び込んでは、繭を撫でる。
ただそれだけの事に、ひどく興奮する自分がいた。
荒い息を押し殺しながら、精を吐き出した事もある。

早く出て来い。
オイラの真白。

美しく、誰よりも高い位置へ上り詰めろ。



廊下の先、真白の部屋から鈴の鳴るような声が聞こえた。



真白。


真白。
真白、真白真白真白真白。


オイラの頭はお前さんでいっぱいだ。


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真白が出でこない!!wwww

百舌は「はやにえ」をする鳥さんです。
店にいるのは、蝶や蛾。
動物や鳥に比べて、虫は地位が低く貧しいためこのような郭に買われてきます。


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