「
死神の帰る場所」
その後の日常
いい大人と公私混同02
ただ、俺を煽るだけの抵抗をいなして、藤本さんの口内を犯す。
ちりっと血の味がする部分に軽く歯を立てると、組み敷いた体がびくりと揺れた。
「ン! た……っ、む、ン」
暴れる体を押さえつけて、舌を絡ませながら吸う。
傷のある部分に何度も舌を擦り付ける。
痛みを耐えて眉根を寄せた藤本さんに、こぽりこぽりと暗い欲望が沸き立つ。
「は、るっとくん、ちょ……まってって……」
「うん?」
「だから、話、っしたいんだってばぁっ。……ふ、ン。もう、君は……」
顔を背けられてしまった。
仕方なく左胸の褐色の飾りをべろりと舐めると、藤本さんの顔が赤くなって、眉が下がる。
女じゃないからと、そこを愛撫されるのをとても恥ずかしがる。
その反応は俺を愉しませるだけだと言うのに。
「終わり? 何で?」
「だから……」
「終わらないよ。あたなは俺のものだから」
「アっ!」
可愛らしく突き出た先端に歯を当てる。
そのまま、少しずつ力を込めいくと、俺の手首を掴む藤本さんの手に弱弱しい力が加わった。
「い……た……。とれちゃっ!」
「覚悟してって、言ったよね? 逃がさないって」
涙目で首を横に振る藤本さんに嗜虐心が満たされたかと思えば、その端からぶくぶくと欲が膨らんでいく。
ああ、もっと、この人を。
もっと。
──あ、そうだ。治仁くん。
リビングで映画を見ていた。
続編が劇場公開している映画の一作目だという。
呼びかけに振り返ると、少し改まって藤本さんが微笑を作った。
──こんなこと終わりにしないかい?
──あんまり、良くないと思うんだ、こういうの。
仕方ない。
あなたは分かっていないんだから。
俺のものになることの意味を。
だから、教えてあげよう。
その体に。
俺のもの、だということの、その意味を。
「っあ、……ああ……あ、ああ……」
時間はたっぷりあるのだから。