「
死神の帰る場所」
本編
死神の帰る場所05
ええとだね。
取りあえず、治仁くんの言葉のね、意味は分かるんだよ。
流石にね。
私にだって分かる。
でもね、ちょっと、理解しがたいというか、ちょっとね。
食べたいって。
ねえ?
私はまで夢の中なのかな。
先週からずっと、夢を見たままなんだろうか。
頭と体がフリーズしている。
「……ただきます」
行儀の良い挨拶の言葉が耳から入ってじんわりと脳みそに届くまでに、私の体は反転していた。
背中を寝具に預けて仰向けにねそべる私。
その体に跨って、天井を背景に私を見下ろすのは。
──死神。
ヤバイ。
なんかもう、魂持って行かれちゃいそう。
いっそ、刈り取って傍に置いておいてくれないかな。
そうしたら、今回みたいに会えないって辛さ、味わうこともないだろうし。
ぼんやりと見上げるその白い顔がゆっくりと近づいてきて、私にキスをした。
とても優しいキス。
何度も角度を変える、触れるだけのキスに、堪らなくなる。
体の中心から、良く分からない熱が沸いてくる。
それは、欲情と言うには切なくて、甘い熱。
好きだよ。
治仁くん。
愛しくて堪らない。
「……めし、あがれ」
思ったよりも掠れた自分の声が恥ずかしい。
やだな、なんか、台詞も間違えた気がする。
恥ずかしい。
そっと、治仁くんを盗み見る。
「っ!」
その顔に浮かんだ、男らしい、若者らしい欲望の色に大きく息をのんだ。
ああ、食べられてしまう──。
「お粗末さまでした」。
「ごちそうさまでした」と言われたら、そう答えよう。
そう思いながら、ゆっくりと瞼を下ろした。