死神の帰る場所
その後の日常
運動不足は06

リビングに足を踏み入れると、ゆっくりと振り返った黒い瞳が、私を捉えた。

は〜。
そのちょっとした仕種に見惚れてしまう。
今日一日の疲れも、すっかり吹き飛んじゃうよ。

「……えり」

「ただいま」

にこりと微笑んで近づいていくと、長い指をこちらに向けた手が差し出された。
何の迷いもなく、そのてのひらにに自分の手を載せる。
した後で、犬みたいだな、とちょっと笑えた。

指先を握られて、治仁くんの口元に導かれる。
無骨な指に触れた柔らかで少し冷たい感触。


愛しい。
何故かじんと痺れたように感じる指先から、伝わったものが胸をざわめかせる。


腰をかがめて、治仁くんの頭にキスを落とした。


「藤本さん」

「ん? 何かな?」

「今日、ソフトじゃないの?」

「……え?」

突然の話題に頭を回転させる。
ソフト……。
夕食にソフト麺がいい。とかじゃなくて、ソフトボール? だよね?

「今日。ソフトの日」

「……ああ、うん。そう、だね」

今日は月に二回のソフトの練習日。

「行かないの?」

「うん、行かない」

「……」

行かないよ。
私だって学習するんだから。



先々週の治仁くんは、とても、……その、……凄かった。

私も、……ああ、もう……恥ずかしい。

覚えていない事がいっぱいある、気がする。
気持ちよくて、苦しくて、嫌だけど、嬉しいなんて、気がふれたんじゃないかと思う。

散々いやらしい部分を擦られて、声を上げさせられて、泣かされて。


「……なに考えてるの」

「っふ!!」


かりっと指先に白い歯が当たった。
息を呑めば、きゅっと微かに力が入れられて、甘い痛みが増す。


「……」

「はるひと、くん?」

「セックスする?」

「……」


ゾワリ、と腰が痺れる。

ああ、嫌だ。
期待が頭を擡げてる。


「それとも」

「え?」

「こないだみたいにシた方がイイ? 運動、不足?」

「っ!!!」


腰を引き寄せられて、ソファの上に組み敷かれる。
本当に、……治仁くんは手馴れていて。
眩暈がしそうだ。


「どっち?」


持ち上がった口角を見上げながら、躊躇いがちに口を開く。
どっちとか、そんな……。
そういう……。

「っむ! ま……む、チュ……ン、ふ……」

声を出す前に、その口は治仁くんのキスに塞がれてしまった。
巧みなキスの合間にも仕事着の草臥れたスーツが乱されていく。

「……いただき、ます」

「…………はい」


もう、ね。
どうしたって君には適わないんだから。

君と愛し合えるなら。


何でもいいよ。




次の日、出勤できさえすれば!


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