死神の帰る場所
その後の日常
いつか地球の王子様が01

閉店後に、レイが私を呼び止めた。

「あら? なあに?」

「ええ……と……」

「言い難い事?」

「いえ……」

キッと切れ長の目に射すくめられる。
微かに頬が紅潮しているのが、とても綺麗だ。

美人よね。
羨ましいわ。

心の中でそっとため息を吐く。

「あの、ママは亀さんと、どういう関係なんですか?」

「……どういうって。昔馴染みの常連さんよ?」

キタキタと思いながらも惚けて答える。

もうだいぶ前からレイが亀ちゃんに思いを寄せていることは分かっていた。
年上で、柔和で、そうよね、レイのタイプよね。
それは分かってるんだけど。

「本当ですか?」

「本当」

にっこりと笑って、でもね、と言葉を続ける。

「あの男は止めておいたほうがいいわ。性質が悪いから」

瞬間的に顔を強張らせたレイに心の中で溜息を吐く。

恋は盲目だ。
きっと今の言葉も、その意味の通りに彼女に届いてはいないだろう。

困ったわね。

「……恋愛は自由よ。恋をして更に綺麗におなりなさい」

レイの張りのある頬に人差し指を押し付けて微笑めば、こくりと頷く。


個人的には、お店の子たちには幸せになって欲しい。
素敵なパートナーが見つかれば、それは喜ばしいことだと思っている。
恋をするのも良いと思う。
若いうちはいろいろと経験して、失敗して、その過程こそを大事にして欲しい。

ただ、経営者としてはね。

お店の女の子が減るようなことになると、それはそれで困ってしまうのよね……。
お客さんとトラブルがあれば、フォローしないわけにもいかないし。


まあ、亀岡ならば、トラブルにはならないだろうけど。
ならないだろうけど、レイの想いが叶うこともないだろう。

……多分。


支度をして店を出ると、扉の脇の壁に凭れていた亀岡が体を起こした。

「送るよ、ママ」

「ありがとう」

仕方がないとはいえ、正直疎ましい。
疲れているときは余計に。
亀岡だから、余計に。

「……レイを弄ばないでね」

「やだなあ、ママのお店の子に何かすると思う?」

「…………そうね」

知らないわよ、そんなこと。
ああ、面倒くさいったらない。

にこにこと微笑を絶やさない亀岡の顔から視線を逸らした。


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