さあ、うたおう
本編


仰向けのオレに覆いかぶさる深雪を見上げる。


ああ、くそう。
嬉しそうで何よりだ。


熱く火照る頬は隠しようがなく、しかめ面をしてもが格好付かない。
あんな言葉に心拍数を上げる日が来るなんて、思わなかった。


「も一回、愛し合います?」

「遠慮しとく」

「じゃあ、一緒に暮らします?」

「ハ?」

「え、じゃあ、お嫁に来ますか?」

「……バカ?」

「え?」

「……頭オカシイ人? ちょっと色々考え直させて?」


思考回路がわからない。
じゃあ、って言葉の意味がわからなくなる。
これがジェネレーションギャップといいうものなのだろうか。
いや、それは違うだろう。


きょとんと見下ろしてくる瞳に曇りがないのがイタい。

嫁ってなんだよ。

つーか、おまえ、自分の人生をんな簡単に決めていいのかよ。
こんなオレの適当な言葉なんかで。
超なんも考えてねえ言葉なんだけど。
いいのかよ?
びっくりするわ。

自分の若いころを思い出して、ほろ苦い味が胸に広がる。
なあ、前途洋洋な青年よ。
そんなことでいいのかね?



道、踏み外してんじゃねえよ。



「アキラさん。愛してます」

「……ん」


深雪の体が圧し掛かってきて苦しい。

苦しい、けど、……ちょっとは嬉しい。
多分、結構。
嬉しい。


「愛してます」

「ん」

「愛し合いましょう」

「ん……ン?」




「愛し合いましょうね」

「っア、はっ……んン!」




するりと腰を撫でられて、たったそれだけの事に、中心に甘い痺れが走った。
口から出てしまった言葉、っつーか喘ぎ声は取り返せねえ訳で。

そういう訳だ。
察しろ。


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