「
会長^2」
会長襲われた
20
クマちゃんが無線を繋いで何か指示を出している。
一気に仕事モードに入ったクマちゃんにはオーラの様なものが漲っていて、下手なヤクザ屋さんより怖い。
「藤村先生」
「ひゃい!?」
左ノ助が、怖い顔のまま徹クンを呼びとめた。
うん、かなり怖がってるね、徹クン。
ごめんね、うちの不肖の家人が。
「暫くこちらから警護を付けさせていただいてもよろしいでしょうか」
「は? はぁ……? 構わないけど……?」
「今回の誘拐の目的は、金品ではなく暗殺の可能性があります」
「おやおや、それは……物騒だねえ」
「旦那様」
思わず呟くと、執事と秘書に睨まれた。
おお、かなり物騒だ。
「暗殺が目的の場合、失敗したと分かれば再度狙われるでしょう。屋敷に出入りする藤村先生に危害が及ぶ可能性があります」
おや、それはいけない。
「先生ご本人と、ご家族様の安全の為に、少々窮屈かとは思いますがご協力いただけますか」
「あ、ああ、それは、うん。こちらこそ、お願いします」
ぺこりと頭を下げた徹クンは、私に手を振ると朔夜クンに連れられて行ってしまった。
置いて行かれた浩太郎が慌てて後を追いかけていく。
グッドラック、社長。
「さて、旦那様」
「……はあい」
双子の四つの目が私に集中していた。
グッドラック、私。
「旦那さまには、これから別宅に移っていただきます」
「うん」
「そこで、表向きは、ドジをして大怪我をしての療養と発表いたします」
「ドジ……」
「格好悪いから誰にも会いたくない、とワガママをおっしゃって、面会謝絶です」
「……うん」
「よろしいですね?」
「…………うん」
何だか散々な扱いな気がするが、二人がおっかないから文句はない。
「では参りましょう」
「うん」
「道々、ゆっくりと、お話は、伺います」
ひいい。
やっぱり怒ってるんだね?
怒ってたんだね?
ちらりと絹江さんを見ると、微笑みながら手を振っていた。
「わたくしはこれからお稽古に参りますの」
……三人ですか?
三人きりですか?
後悔が波の様に押し寄せて、溺れしまいそうだよ、僕。
─一章 終─