会長^2
会長襲われた
18

思ってもみない弊害に、私の心は、今再びの大打撃を受けた。

そうか。


写真が……年齢が……。




無言で絨毯に打ち崩れる私の頭上から、またため息が降ってきた。
あああ、そんなに追い討ちをかけないでくれないか。



「先生」

社長秘書のハスキーボイスの方向が変わる。
この室内で先生と言えば。

「はっ!? はいいいぃぃい!??」

徹クンが裏返った返事が社長室に反響した。



……どれだけでかい声を出したんだろう。



社長室の壁が反響するなんて初めての経験だよ。

「お久しぶりです。」

「ひっ! ふへ?」

「朔夜です」

「さっ? ……おぉぉ! おお、おお! これはまた……」

ズレた眼鏡をかけ直した徹クンが、まじまじと秘書を見つめた。

「いやあ、何というか……、うん、見違えたよ」

「恐れ入ります」

「いやはや……」

ハンカチで額を拭う徹クン。

気持ちは分からないでもない。
朔夜クンの幼い素顔を知っていれば、驚かない方が無理だろう。

「宜しければ病院までお送りいたしますよ」

「いやいや、それは申し訳ないよ」

「方向が同じですから、遠慮なさらないでください。先生もお忙しいでしょうに、会長にお付き合い頂いてありがとうございます」

おや、なんだか言葉にトゲがあるように聞こえるよ。

「藤村先生の用件はお済みですよね?」

右助が頷くと、朔夜の視線が私に突き刺さった。
床に座り込んだままのため、自動的に見下ろされることになる。

「会長、いつまでそのようにされているおつもりですか」

「そんなに睨んだら、せっかく美人がだいなしだよ」


「……会長……」


軽口に、朔夜の瞳がすっと細められた。
すると、急に気温が下がったような心持ちになる。


「ウザイです。
そもそも、何ですか、そのハーフ丈のパンツ。元を知ってるんですから、見苦しいったらない。以前より自分のお声が高くなってるのが分かりませんか? 女子高生のように声を上げて、きーきーと、猿ですか? アホですか? ほんとうに聞き苦しいです。
それに、何度話の腰を折れば気が済みますか? 皆さん、会長に甘いんですから、ご自分で律していただかないと。傍迷惑です。」

美しい口元から次々と紡ぎ出される言葉に、ただ圧倒されるばかりだ。


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