「
会長^2」
会長襲われた
15
ぺろりと舌を出した絹江さんとこっそり笑い合う。
気付くと、阿隅が元いた扉の脇に下がっていた。
顔を赤くしたり青くしたり忙しない。
双子の剣呑な眼差しを受けて視線が定まらない様子だ。
あ、私とも目を合わせてくれないぞ。
切ないなぁ。
私がいない間に執事が取り分けてくれたパスタをフォークに巻きつける。
肉がゴロゴロ入っているミートソースがどうしようもなく美味しそうで堪らない。
この食欲は何だろうね。
「さあ、浩太郎、これでいいかな?」
「はい」
不承不承といった体の浩太郎が、小さく頷く。
本当に勇気クンには申し訳ないと思うが、仕方がない。
罪悪感は私の胸にしまって、今後に生かすよ。
うん。
たぶん。
「そうだクマちゃん、話の腰を折ってすまない。改めて今回の顛末を報告してくれないか」
状況が特殊すぎて、全体の報告を受けていなかった。
ふむ。
流石に私も動揺しているようだ。
「はい。昨日の16時30分ごろ、坂本から本部にミシングの連絡が入りました。旦那様の居場所はGPSで特定されましたので、建物周囲に人員を配置しました」
「犯人の要求は?」
「それがありませんでした」
「へぇ?」
明らかに誘拐なのに、要求がないとは不思議だ。
咀嚼しながら、次の一口を巻きつける。
あっという間にさらってしまう。
殺害が目的……?
ならばもう少しやりようがあるだろう。
「犯行グループの特定ができませんでしたので、突入待機で浩太郎様の判断を仰いでおりました」
「特定はできなくても予測はついてるの?」
「何パターンかは」
ああ、そう。
物騒で、いやーね。
「浩太郎様のGOが出たのが22時過ぎ、まずは……「ちょっと待ってよ?」
あれ?
あれ?
おかしくないか?
「何でそんなに時間が経っているんだい?」
タイミングからして、17時には浩太郎に連絡が取れていただろう。
警備隊だって遅くとも18時には待機完了していたはずだ。
4時間。
犯人グループを特定できなかったからと言っても、ただ待機するには長すぎないだろうか?
「それが……その……」
クマちゃんが微妙な顔をする。