会長^2
会長襲われた
14

筋肉のついた膝は堅いけれど、抜群の安定感だ。



「懐かしいねー」

「はいっ?」

クマちゃんの胸に後頭部を当てて、下から覗き見ると、額に汗が光っていた。

「クマちゃんのお父さんにさ、良くこうして膝に乗せてもらったなぁって」

懐かしい。

「で、どうする?」

「っ! ……佐々木さん、どうにかしてくれっ!!」

あ、それは狡い。



名前を呼ばれて、呆然としていた左ノ助が反射的に動く。

「だん……「駄目だよ」

伸ばされた手を目で制して、再び阿隅をちらりと見上げる。

「クマちゃんにも処分が必要でしょう? 警備の配置にも原因があったのだものね。だから、普段の業務に加えて勇気クンの面倒を見る。」

どうかな?

この場合、私の責任は棚上げだ。
それを上げ連ねたところで、無意味なんだから。

彼ら使用人にとっては、私のわがままはきっと自然災害とかと同列なんだね。



「みっちりと。使える人材に再教育してくれたら、私もクマちゃんも安心だろう? 若い芽は育てなくちゃね」



ウインクなんぞしてみた。

立派な眉毛を八の字にしたまま、警備隊長が固まる。



そんなに衝撃的だっただろうか。



「クマちゃん、固まってないでお返事」

「……はい?」

「勇気クンの件は、それで良いね?」

ばしばしと膝頭を叩くと、渋い顔をしながらもゆっくり首を縦に振った。

「…………──わかりました。坂本はきっちり扱き上げます」

「あはは、お手柔らかにねー」

泣く子も黙る警備隊長の研修。
自分が提案しておいてなんだけれども、唇を引き結ぶクマちゃんに一抹の不安を感じる。

勇気クン、あんまり泣かされなきゃ良いけれど。

心の中で合掌。



チーン



「ぅほっ?」

急に体が宙に浮いた。
左ノ助に脇を抱えられていた。

正面に白い目をした執事殿の顔がある。

いやっ、そんな目で見ないでくれ。
私もちょっと調子に乗りすぎたかと思っていた所なんだ。

「もうよろしいのでしょう? こちらへおかけ下さい」

空中移動して、元の肘掛け椅子に収まった。



「阿隅さんだけ狡いわ! 時雨さん、こっちにいらっしゃい。おばちゃんが抱っこしてあげる」

「わーい! 絹江さんの抱っこー」

飛び降りようとした体が動かない。
両肩に指の長い手が置かれていた。

「会長、そういったことはご自宅でなさって下さい」

振り向くと、冷笑をたたえた能面のような秘書の顔。



ちぇっ。
なんだい、先程までは固まっていたくせに。


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