「
会長^2」
会長襲われた
13
「普段は私独りに対して2人で警護してくれるよね」
「はい」
「昨日は絹江さんと私、二人に対して3人だった。 クマちゃんの采配?」
「いえ、お出かけの時間が早まりましたので、警護員が出勤前でした。もう一人が自宅から直接、旦那様に合流する予定でした」
そうそう。
たまにはショッピングをしよう!
銀ブラだ!
デートだ!
と、直前に二時間程早く出かけることにしたのだよね。
「絹江さんが化粧室に行くのに二人付いていったからさ、勇気クン独りになってしまったんだね。そこで私の悪戯心がむくむくと」
うむ。
「やっぱり可哀想だね」
私に撒かれてしまうのは情けなくはあるけれど。
経験の浅い彼を、分かっていてからかってしまったのだから。
「クマちゃん」
にっこり微笑んで手招きする。
一礼して近付いてくる阿隅をソファに腰掛けるよう促した。
これで強面を見下ろせる。
逃げられないように正面に立ち、両肩に手を乗せた。
「勇気クンが私の警護に嫌気が差したというのなら、配置換えしてあげなさい。そうではなく、続ける意欲があるのなら、そうだね……1ヶ月間、減給と君からの研修を受けるということで、いいかな?」
処分がない、と言う訳にはいかないだろう。
運の悪いことに、警護から離れた私は誘拐されてしまったのだから。
「しかし、それでは……」
「クマちゃん、これはね、私からのお願いだよ」
「いけません。他に示しがつかない」
んーもう、頑固だねー。
「それなら、脅迫に変更だ」
肩から離した両手をぶっとい足の膝頭に置く。
軽く中心方向へ導くと困惑顔で素直に足を閉じる。
ふふふふ。
「! だんなさまっ……!!!?」
くるっ。
ぴょこん。
ソファの上の頑丈な膝の上に飛び乗った。
部屋中の動きが止まる。
「ほら、要求を呑むまでこのままだよー。」
首を回して固まった阿隅にニヤリと笑いかけた。
みるみる狼狽えていく顔面に大満足だ。
「だんなさまっ! いけません、降りて下さいっ!」
「うん、クマちゃんの言質が取れたらね」
「困ります!」
「脅迫だから困ってくれなきゃ困るよ」
その気になれば私を持ち上げることなど容易いだろう。
だけど、この律儀者は、きっとそんな事しようとも思わないんだ。
わたわたと両手が空を舞っている。