会長^2
会長襲われた
07

「時雨クンが寝ている間に外傷なんかの診察は済ませたからね。痛いところはないかな?」

痛いところ……。

首を捻る。



拘束されていた手足を動かしてみるが、特に不具合はない。

見た目にも痣や痕は確認できない。



「特にないね」

「気持ちが悪いとか、具合が悪いとかは?」

「うん、今のところ平気」

むしろ体が軽く、驚くほど清々しい。
今更ながら、自らの老いを自覚した。

時間は何てむごいんだろう。



「そうか。それは一安心だね。」

徹クンが頷きながらカルテを打ち込んでいる。
導入時は文句ばかりだった電子カルテも、ずいぶん手慣れたものだ。



「こちらに移動する前に僕んとこに寄って一通り検査したんだよ。何の異常もなかった」

「ふうん」

「さて、何でこんな事になったのかね」

まじまじと見つめられる。
照れるじゃないか。

「あ、そうだ。15年くらい前に盲腸しただろう? その傷痕も綺麗さっぱりなくなっていたよ」

「へぇ?」

それは興味深い。

傷痕があった部分を確認するためにシャツを捲る。
ボトムと下着を下げてのぞき込むが、つるりとした肌しかない。

「はー! 本当だね!」

ぺたぺたと触ってみるが、綺麗なものだ。



「旦那様っ!」

鋭い叱声に肩をすくめると、忍者のような執事に両手を拘束されていた。
あれよと言う間に、秘書が乱れた着衣を整える。

流石双子。
絶妙なコンビネーション。

「人様の前で肌を露出するものではありません」

耳元で左ノ助の低音が響く。
くすぐったい。

生娘でもあるまいし。
おっさんの腹に慎みは必要だろうか?



ああ。
今は、おっさんではないのか。



くるりと顔を横に向けると直ぐ傍に左ノ助の厳つい顔があった。

「左ノ助、私は今、幾つ位かな?」

「来月で50におなりですが、このお体がお幾つかというご質問ですよね」

「うん、一応自分の歳は把握してるからね」

失礼な執事だ。



「藤村様」

「ふぉいっ?」

急に名前を呼ばれた徹クンが狼狽える。
ふはは。
相変わらず左ノ助が苦手かな?

「主人の身長を教えていただけますか」

「えっ、とー、はいはい」

「身長?」

「はい」

「おーあったあった。いいかね?154.6cm、だよ」

……。
10cmも縮んでるとは、地味にショックだ。

「154……」

暫く考え込む執事。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -