会長^2
会長襲われた
06

「己こそ秘書としての分を弁えなさい」

左ノ助の仁王像の如き面相が凄みを増す。



「執事が秘書に口を挟むのはお門違いだろう」

菩薩像の様に細められた佐々木の目の奥が光っている。



この双子は顔を合わせればこの調子で、間に挟まれた私は毎度身の細る思いをする羽目になる。

「左ノ助、私が悪かったから良いんだよ。佐々木も良いね?」

頼むから頭上で大戦争を始めないで欲しいんだ。



「会長」

「……なに?」

左ノ助に向けられていた佐々木の視線が急にこちらに突き刺さった。
穴が開きそうだ。

「右助、とお呼び下さい」

後頭部から左ノ助のあからさまな溜め息が聞こえる。



佐々木……改め右助は、双子の左ノ助と揃ったときには名前で呼ばれることを望む。
二人とも佐々木だから、と言う敏腕秘書の釈明はもっともなんだが。

左ノ助だけ名前なのが気に入らないんだろう。
可愛いところもあるんだ。



そんな事、本人には口が裂けても言えないけれど。



「うん、右助」

呼んでやると、満足そうに頷いた。



うんうん。
可愛いところもあるんだ。



「旦那様、藤村様がお待ちです」

にやにやしていたら、今度は左ノ助の機嫌を損ねたらしい。
キャスター付きの安楽椅子が自動的に徹クンの前に移動する。
おお、楽チン、とは後ろの気配が言わせてくれない。



「良いのかな?」

小さな目をしょぼつかせて、私の頭上と左ノ助とに視線をさまよわせる。

気持ちは分かる。

だが、彼らのボスは君の目の前にいるんだよ。
失礼だね、徹クン。



「お願いします」

「お待たせして申し訳ありません」

なんの躊躇もなく二人が応える。

うん。
まあ良いさ。



「時雨クン?」

「うん、徹クン、よろしく頼むよ」

「勿論さ。……しかしね、また、君には驚かされる」

「いやあ、私も驚いて心臓が止まりそうだったさ」

「昔に戻ったようだよ。僕がおじさんのままなのが残念だねえ。」

あはははは。



旧友との談笑は、執事の「こほん」というわざとらしい咳払いに中断することになった。

まだご機嫌斜めなんだろうか。



「それじゃ、問診させてもらうよ」


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