「
collar」
赤と茶
01
#9が、精悍な顔に困惑の表情を浮かべて自分の上に影を落とす人物を見上げた。
真っ白な寝具の上。
その身に何も纏わずに横たわる#9は、まるでギリシャ神話から抜け出した闘神のようだった。
逞しい体躯。
長い手足。
褐色の皮膚の下の筋肉の美しさは芸術的だ。
思慮深い眼差しと同じ金色の、たてがみのように豊かな髪の毛が枕の上に波打つ。
男らしいその姿を改めて目にして、#3の頬がぽっと赤らんだ。
その体を自分が跨いでいるという状況に興奮してくらくらする。
憧れと、愛しさと、恋しさで胸がキュッと締め付けられるようだ。
「#9、オレ頑張るね?」
うるさく跳ねる鼓動が邪魔をして上手く声が出ない。
ああ、緊張している。
そう認識した途端に目が潤んできた。
カタカタと体が震えるのを止められない。
呼吸の仕方が分からない。
上手く息が吸えない。
カッコワルイ。
……どうしよう。
落ち着こうとすればする程#3の頭は真っ白になっていく。
大事な人に良い所を見せたい、ただそれだけの事なのに。
どうして。
どうして?
どうしよう……?
グルグルしている#3の頭に、大きな暖かい掌がふわりと乗せられた。
「大丈ブ。ほら、おいで」
#3の華奢な体が、ふわりと大きな腕に包まれた。
#9の暖かい体温が#3の震える体にじんわりと染み入る。
「泣かなくてイイ」
ちゅっと柔らかな唇に#3の目尻の涙が吸い取られた。
そっと目を上げると、優しい微笑みが直ぐ傍で#3を見つめている。
目が合うと、眉間にキスが落とされた。
そのまま目を閉じて#9の体に手を回すと、答えるように抱きしめてくれる。
「だって、オレがアドなのに……」
ぽろりと零れた声の弱弱しさに、#3自身も驚いた。
恥ずかしさにじたばたとするが、優しく力強い#9の腕はびくともしない。
諦めてその居心地の良い胸に頬擦りすると#9の鼓動が聞こえて、#3の気持ちを落ち着かせた。