「
明日もFull Moon」
隣の晩御飯
01
デスクにベッドに小さめのローテーブル。
見慣れたボクの部屋。
それからこちらも見慣れた幼なじみの顔。
「課題、やるんじゃねえの?」
──よく言う。
涼しい顔をした隼人の言葉にひっそりと滲む欲情が、甘い芳香を放つ。
「……ンっ」
油断していた。
むせ返る程の濃密な香りを至近距離で思い切り吸い込んでしまった。
頭がくらくらする。
ボクはデスクで。
隼人はローテーブルで。
お互い教科書とノートを広げて明日提出の課題と戦っていた。
腕に当たって落ちた消しゴムが転がって、あぐらをかいた隼人の膝の下に隠れた。
ボクはその膝を除けようとしただけなんだ。
断じて!
断じて!
他意はなかった!
……その時は。
隼人の膝に置いた手をすくい取られる。
乾いた固い手の力は決して強くない。
それでもボクは振り払う事ができずに隼人の顔を仰ぎ見た。
「エロい顔」
「……る、さい」
にやりと笑う男らしい顔。
ああ、もう、美味しそう……。
ボクにだって人並みに意地もプライドもある。
あるけど……。
この誘惑の前では豆腐よりもはるかに脆い。
最後の抵抗である悪態も、もつれた舌の上で甘い砂糖菓子のような声音になった。
期待に膨らむ胸の鼓動が煩い。
隼人の体からも良い匂いがする。
本能のままに擦り寄ってがっしりとした首元に顔を埋めた。
すんすんと鼻を鳴らして胸いっぱいに吸い込んだ香りに、体の奥が熱くなる。
我慢できないや。
「はーやーとー。ね、ちょうだい?」
欲しいものは強請れば良い。
お願いすれば良い。
意地を張ったって損なだけ。
昔、可愛がってくれたお姉さんたちが教えてくれた。
「お前は、ラリってる方が素直でいいよな」
「普段も素直じゃん」
「どこが!」
ちゅっちゅっとお互いの顔中にキスを繰り返しながら服を脱がせ合う。
どんどん濃密になっていく欲情の香りに酔って、ふわふわと宙に浮いているようだ。
凄くイイ。
なんだか、この匂いだけでイけるかも。
これまでしてきたのエロエロな事を思い出して、妄想だけでも気持ち良くなれそうだ。
勿論!
ちゃんとシなきゃ嫌だけど!