明日もFull Moon
隣の晩御飯
16

隼人と約束して初めの頃。
あまりの空腹に負けてつまみ食いした事がある。

勿論隠れて。
でも即効でバレた。

「そしたらさ……大変だったんだ……。口きいてくんないし。弁当も部活の仲間と食べちゃうし。登下校も独りでいっちゃうしさ。しかも……彼女とか作って休みの日もどっか行っちゃって、全然遊んでくんないし……」

怒った隼人は本当に怖かった。
それは、空腹を我慢するより、よっぽど辛くて。

思い出しただけで涙が出そうだ。
ぐす。
あ、鼻水が出た。

「おまえ……」

「ミチナガさん、いいですから、俺」

「隼人君……ごめんな、バカで。」

「イエ……ガキの頃からの付き合いなんで分かってます」

ミっちゃんが隼人に謝っている。
バカ?
ボク?

「──仕方ないなあ……」

ミっちゃんがボクの頬を両手で挟みこんで覗き込む。
にっこりと笑うとその魅力に、ハーフとはいえ同族のボクですらぼうっとしてしまう。

ゴっ!

「────!! いっだあ!!」

頭突きを食らいました。

「こんなことになってたのをボクに内緒にした事と、最近顔色が悪いのを心配させた事。
あとは、隼人君に迷惑をかけた事。
まったく、バカな子」

ぎゅっと抱きしめられたけど、まだ目の前がチカチカしますよ、父上。

「隼人君」

「はい」

「今後はボクから定期的に精気を分けるけど、それは勘弁してね」

「分けるって……」

「さっき見てただろ?」

「あー……あれ……」

顔を僅かに歪める隼人にミっちゃんが明るく笑う。
もごもごと何かつぶやく隼人にますます笑い声が高くなる。

「悪いけど、そこは我慢して。ちなみに、このバカとステディになる気になったら教えてよ」

「……スタディって何?」

「なんでですか?」

口を挟んだのに、すっかり無視された。
ボクの話じゃないの?

「契約すれば精気が足りないとかは問題なくなるし、子供も作れるから」

「!??」

「この腹、孕ませたくなったら、教えて、な?」

ボクの臍の辺りを撫でながらにたりと怪しく笑うミっちゃんに、隼人の喉が大きく上下する。

ちょっと待て、やっぱりボクの話か?

……うーん?







……まあ…………あれだ。
ここの所の慢性的な空腹からは開放されるっぽい。
めでたし、めでたし、だよな?


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