明日もFull Moon
隣の晩御飯
14

硬い表情の隼人と見詰め合う。
急にどうしたんだろう?

それにボクとミっちゃんは兄弟じゃない。

「ミっちゃんはお父さんだよ〜」

「ハ?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「…………は? お父さん? ……え? ちょっとまてよ、お前ん家の親父さんって海外に転勤してる……。…………ハ?」

「カっちゃんはお母さん!」

「…………はあ?」

「えっとね、お父さん役のカっちゃんは人間で、ボクを産んだからお母さんでー、お兄さん役のミっちゃんは淫魔で、お父さんだよ? ね? ミっちゃん」

表向きはボクとミっちゃんは兄弟、カっちゃんがそのお父さんって事になってるけど。
あれ?
隼人に言ってなかったっけ?

「頼通、おまえちょっと黙ってな。隼人君がかわいそう」

長い溜息を吐きながら、ミっちゃんがボクの口を手で閉ざした。

かわいそう?
隼人の顔を見ると、なんとも言えない間抜けな表情をしていた。
いい男が台無しだ。

「まったく……こんなモン曝け出しといて」

「ンぎゃっ!」

ミっちゃんに尻尾を握られて全身の毛が逆立った。
酷いよ、ミっちゃん。
涙目で振り返るが、シカトされた。

「隼人君、このバカ者からどこまで聞いてる?」

「どこまで……って?」

「うーん、そうだよなあ。頼通だし。あ、じゃあさ、まずはキミ達がどんな関係なのか、教えてくれる?」

「あ、っ!」

サッと隼人の顔が白くなった。
びくりと揺れた肩が震えている。

「はにゃと?」

抑えられたまま、手の中で幼馴染に呼びかける。

どうしたんだろう?
今日の隼人は普段と違ってころころと表情が変わる。
視線を揺らす隼人は少し頼りなくて、ボクも不安になってくる。
隼人にはいつもの不適な笑顔でいて欲しい。

「あぁ! 違う違う! 怒ってるとか、そう言うんじゃないからね?」

ミっちゃんが穏やかな声音を作って隼人を魅了した。

ミっちゃんクラスの淫魔は話す言葉に魔力を乗せることができる。
その誘惑に勝てる人間なんて滅多にいない。
ついふらふらと、ミっちゃんの言葉に頷いてしまうのた。

おかげて隼人はすっかり正気を取り戻したけど、ボクは何となくおもしろくない。
隼人のばかー。

「頼通は淫魔と人間、どちらでもあるし、どちらでもない。……だから、キミ達の事を教えて欲しいんだ。これはね、極端に言うと頼通の生死に関わることだから」

ミっちゃんがやけに真面目な顔で言うから、僕と隼人は顔を見合わせた。


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