「
童話体験」
おやゆび姫
青年@
眩しい朝日と小鳥の囀りに覚醒を促され、飛び起きる。
「ヤバっ……学校、遅こ……く……」
途端に目に入った景色を認識して、体内を一気に廻った血液がすうっと引いて行った。
急に上体を起こした反動で揺れるくるみのベッドの上で、掛け布代わりの白い花弁を握りしめる。
「やあ、起きたかい? 僕のおちびさん」
にこにこと、朝日と同じくらいさわやかな笑顔の青年が、呼びかけてきた。
ちび言うな。
『僕の』とか……キモいし。
心の中で悪態をつく。
差しだされた青年の掌に移動すると、頬のすぐ横に持ち上げられた。
高い。
高所恐怖症の身としては、かなりの拷問だ。
しぶしぶ頬にキスすると、やっと机上に帰して貰えた。
ここでも十分高いのだけれど。
まあ、広くて安定しているだけマシだ。
「今日も可愛らしいね、おちびさん」
花弁で裸の体を隠している雷に、青年が目を細める。
同級生の間でも比較的イカツイ体格の雷を形容する言葉として、的確ではない。
変態だ。
絶対に変態だ。
雷は、この数日で何回も味わう嫌悪感に吐き気がした。