「
老いも若きも等しく」
釦
主人×バトラー
焦らしプレイ(?)
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手が震える。
ああ、もちろん歳の所為でもある。
だがしかし、そればかりではない事は自分が一番分かっている。
バトラーの仕事は多岐に渡る。
その中で唯一、苦手を感じるのが、主人の着替えを手伝うことだ。
否、先代に仕えているときは何も感じなかった。
この年若い主人に代が変わってからの事。
シャツの釦は小さい。
老眼の進んだ私の目には、眼鏡をかけてもよく見えない。
加えて、だんだん衰えてきた指先の感覚は、言う事を聞いてくれない。
釦を弄ぶ幼い子供のような拙い動きは、己でも焦れる程不器用だ。
そんな醜態を、主人は無言で見下ろす。
叱責を頂ければ良いのに、それもなく。
ただ、視線を感じる。
どのような顔をなされているのか。
正直、とても気になる。
呆れていらっしゃるのだろうか。
お怒りではないだろうか。
この老いぼれよと、蔑んでいらっしゃらないだろうか。
しかし仰ぎ見る事はできない。
私はただ、規則正しい主人の息遣いを耳にしながら、釦をかける。
ゆっくり、ゆっくりと。
朝は、主人の若々しい体をシャツに包む。
そして、夜には、それを寛げて行く。
ゆっくり、ゆっくり。
焦燥感に、最近では感じたことがない程に鼓動が早まる。
顔が熱くなるのを止められない。
その作業にかかる永遠にも感じる時間が、苦手だ。
そして、その時の主人の視線が、苦手だ。
それから。
その作業に、心が乱れるのが苦手だ。
何故か、いかがわしい連想が私の頭によぎる。
そんな己に戸惑う。
いつまでも目の前に晒される主人の肌。
目が離せなくなる。
瑞々しく、健康的な、青年の体。
女性の家を訪ねた後の、情欲を残す香り。
狩に出かけた後の、汗に汚れた香り。
そんな物は、いらない。
私を混乱させる、そんな物は、いらない。
一歩退けば、感じずにいられるのに。
それなのに……。
私の震える指先は、また釦をかけ損ねた。
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多分、ニヤニヤしてるよ!
ご主人様。
退役するはずのバトラーを留めたのはもちろんご主人様です。
耳まで真っ赤になるバトラーに、口元だらしなくなってる筈。
からかってはその反応に満足しているんでしょうね!