「
老いも若きも等しく」
汗
変態S課長×多汗症部下
匂いフェチ
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「変! た、い?」
「うん、否定できない」
戸惑いを隠せない俺と、にこやかに受け答える課長。
課長は手にしていたスーツのジャケットをそっと机の上に置いた。
俺の机に。
俺のジャケットを。
うん、やっぱり俺のジャケットだ。
昼休みのオフィスは照明が落とされて薄暗い。
明るい外から戻ってきた俺の目には、課長の表情がよく分からず、不安が募る。
「……何して?」
「見たままだよ」
見たまま……。
財布を取りに戻った俺がドアを開けると、独り残っていた課長がゆっくりと振り返った。
顔に押し当てていたジャケットを下ろしながら。
俺のジャケットを。
このくそ暑い最中に着倒して、汗染みだらけの……俺のジャケット、を。
「……臭い、っす、よ……?」
「いい匂いだよ」
「!!」
訳が分からず、ただ羞恥心に力が抜ける。
真っ赤になった顔を両手で覆う。
「……勘弁、してください……」
「気持ち悪い?」
「!」
耳元で聞こえた課長の声にびくりと体が跳ねた。
指の隙間から覗くと、思ったよりも近くにある有能な課長の顔に浮かぶのは、灰汁の強いの笑顔。
気持ち悪い、とかよりも。
ただ恥ずかしくて堪らない。
代謝のいい俺は多汗症で、それは思春期の頃からのコンプレックスで。
そのことを指摘されているような気がして。
いたたまれない。
「うん、やっぱりいい匂い」
「ふああぁ……!」
すん、と耳元で鼻が鳴る音がして、俺は尻餅をついてしまった。
なんなんだ、この人。
怖い。
怖すぎる。
「去年の忘年会、覚えてるかな?」
「去年…… ?」
ぽすりと頭の上に載せられた手の重さと、心持ち優しくなった声音に顔を上げる。
変態の癖にやけに男前な課長の顔が、目の前で優しく笑った。
「汗っかきなんす。臭いんす。って逃げ回るお前を押さえつけて匂いかいだだろ、俺」
「…………ああ……」
物凄く嫌な記憶だ。
今の今まで封印していたくらいに。
「興奮したんだよね」
…………。
いやいやいや。
その告白、いらないっすよ?
「!?」
にっこり微笑んだ課長の手が、汗で濡れた俺の襟足を擽る。
「汗、……舐めてもいいかな?」
「ひィ! イヤ! 嫌っす!」
じりじりと縮まる課長との距離に、俺、目からも汗が出そうです。
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バレてしまったらしょうがない!
居直った変態はおっかないというお話ェ
普段の課長は、偏屈そうな顔の割りに冗談も通じる頼れる上司として社内の人気者です。
ちょっかいを出しても気づかない、鈍い主人公をからかっては遊ぶのが趣味です。
涙目カワユスとか思ってます。
気が長いので、なかなか次の段階に進めそうにありません。