0°ポジション

火曜日@[狐塚 焔(きつねづか ほむら)]

メ〜ッチャ可愛がってくれる。
超カッコイイせんぱい。

でもオレがそんなポジじゃ満足してないのなんて、せんぱいは知ったこっちゃないよね〜?



 *  *



素肌の背中に直接当たるロッカーがひやりと冷たい。

今日も、いつもとは逆の立ち居位置。
床に座り込んだオレの上に覆いかぶさるのは、いつもなら少し下にある筈の明るい茶色の髪の毛。

やっぱり、男だし。
と、妙に納得する。

見下ろされてばかりじゃ、やっぱり、嫌だよな。

「ナっちせんぱーい」

「ン」

ちゅっと僅かに濡れた唇にキスされた。
器用に首をかしげた狐塚に、手馴れた様子が見て取れる。
少し離れた顔がにぱっと愛想良く笑うから、つられてオレも笑ってしまった。

すると、少しだけ驚いたような顔をする。

そんな顔すら、格好良いとか、スゲエなあと思う。

格好いいくせに、バスケだってうまいくせに、いつだってオレなんかに纏わりついてくる、犬みたいな後輩。
オレはこの狐塚が可愛くて仕方ない。

オレが呼べば、いつだってとんでもない笑って駆け寄ってくる。
オレと同じバッシュを買ってきて満足げにしてる。
かまってやらないと拗ねて見せる。
普段はわりと生意気そうなのに、オレにだけ素直に甘えてきたり……。


あれ。


そうか。
そうだよな。

オレだけ、なんじゃん。


「好き」

「ンっ……!」

ジン。

痛いような、くすぐったいような。
右手の、中指の、甘皮。
狐塚に歯を立てられて、指の平を、ざらりとした舌で舐められる。
ねっとりと唾液を絡み付けて舐められるとぞわぞわと体が痺れた。

口にオレの指を含みながら、狐塚のアーモンド形の目が、オレを熱っぽく見つめる。


ああ、そっか。
オレ知ってた。

狐塚が、オレの事好きだって、知ったたんじゃん。


狐塚は、格好良い。
今時のイケメン。
で、うちの部のエース。
まだ荒いけど、多分これからスゲー選手になる。

中学の頃から有名で、ビジュアルも良いからファンクラブみたいのがあったらしい。
今だって他校から狐塚を見に来る女の子がいるから、きっと本当なんだろう。


そんな人気者の狐塚に、好意を寄せられて。

オレ。

そうだよな。



優越感に浸ってたよな。


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