「
0°ポジション」
金曜日[金原 宝(かなはら たから)]
大切なチームメイト。
一緒にいると楽しくて、大好きで、信頼できる、本当に良いヤツばかり。
誰一人として欠かすことのできない最高の仲間。
オレ、何か間違えてた?
* *
「ナっち」
決った? とふわりと微笑んだ秋月駿兎の口許に、目が行く。
──この小さな赤い唇が月曜日……。
「ナっちせんぱい」
オレお買い得ですよ? と満面の笑みを浮かべる狐塚焔の口許に、目が行く。
──この真っ白な歯が火曜日……。
「カナ」
大丈夫だ。と眉を下げる池波透流の口許に、目が行く。
──この厚くて大きな唇が一昨日……。
「タカラぁ」
起きてる? 目え開けたまま寝てる? バカなの? あ、バカか。と鼻で笑う雛森繁一の口許に、目が行く。
──この酷薄そうな唇が昨日……。
くらくらと眩暈がして、目を瞑る。
日曜日の告白の答えを、と迫る8つの瞳。
その光。
──今更、“何で”とか“どうして”とか聞くのはNGだろう。
と、流石のオレでも、分かった。
きっと、この人たちを悲しませてしまうし、……シゲには口汚く罵られるだろう。
“なんでオレなのか”とか、“どうして男のオレを”とか、そう言う疑問への答えは得られなかったけど。
多分、本気で、オレ、そう言う意味で思われてるんだって、その事だけは、この数日で嫌でも分かってしまった。
そういう意味で望まれて、求められて、晒されてる。
嫌な動悸と汗が気持ち悪い。
無駄な緊張感。
選べと言われた。
駿兎先輩か。
狐塚か。
透流か。
シゲか。
そんな。
そんなの。
「選べるわけ、ない」
誰も選ばないって選択肢がないのは、おかしくないか?
選べない。
だって、当てはまる選択肢がない。
オレが誰かを好きになるなんて、なんで決めつけているんだろう?
同じ思いを返すかどうかなんて、分からないだろうに
ないよ。
あり得ない。
あり得ない。
だろ?
「そっか」
少しだけ頬を赤らめた駿兎先輩がぎこちなく微笑んだ。
「あれ、おかしいなあ」
口を突きだした狐塚が頬をぷくりと膨らませる。
男の癖に、そんな表情が似合うとか、絶対おかしいだろ。
「待つよ」
くしゃりと微笑む透流が眩しい。
「選べないんじゃしょうがねえよな」
シゲの三白眼が射殺さんとばかりにオレを睨みつける。
8つの瞳に見つめられて、ドキドキドキドキ鼓動が煩いのは。
緊張。
そう、きっと、緊張の所為。
体が熱いのも、息が苦しいのも、涙が浮かぶのも、ぞくりと皮膚が粟立つのも。
「「「「また一週間」」」」
誰かもの、ではないオレ。
「僕 の ナっち」
「オレ の ナっちっせんぱい」
「俺 の カナ」
「オレ の タカラ」
でも、誰のものでもある、オレ。