「
試してみよう」
03
何でこんな事になったんだっけ……。
嬉しそうにオレの股間を見つめる知巳にため息が出た。
そうだ。
こいつの所為だ。
「ねえねえ、乳首って感じないもの?」
「ぶほっ」
昼休みもあと少し。
名残惜しく牛乳のストローを齧っていると、恒例の天然発言。
「守に顔射されちった〜」
「アホ也黙れ。知巳、どうした。具合でも悪いのか?」
首を横に振る知巳。
そのお人形のような口から、さっきの言葉が出たなんて、とても信じられない。
「さっき休み時間にね、アホ也と話してて」
「アホ也定着なの?」
「アホ也の影響か?」
「だかr……」
「ううん、僕さぁ、あのね……、乳首、……感じる、ンだよね……」
知巳が顔を赤らめるから、俺まで恥ずかしくなってくる。
どんな顔してそんな告白聞きゃいいんだよ?
顔を直視できなくて、目線が床の上をさ迷ってしまう。
「そ、そうか……」
「ねえ、オレちゃん無視?」
「アホ也は感じないっていうしさー」
「そうか」
「オレ女の子じゃないし〜」
「むきー! ボクだって女じゃないし!!」
知巳が翔也の頬を抓る。
へらへらっと笑った翔也が、すっと手を持ち上げた。
「ン! やアん……!」
「おい、翔也!」
勢い良く後ずさりした知巳の顔が真っ赤に染まっている。
耳を擽った、鼻にかかった知巳の甘い声。
おいおい。
エロいだろ。
「ほんとだねえ〜。ちょっと触っただけなのに」
「……しょうやの、ばか!!」
両手の親指と人差し指で何かをつまむような動作をして笑う翔也に、ちょっとした怒りが沸く。
ダチに何してんだ、こいつ。
「あ〜ん、守〜。翔也がいじめる〜」
ぎゅっとオレに抱きついた知巳の背中をぽんぽんと叩いてやった。
翔也を睨みつけると、ぺろりと舌を出す。
「男同士なんだから、ンな怒んなよ」
「そりゃそうだけどさ」
男同士だってどうかと思わんでもない。
「ねえ、ねえ、守は? 守は感じない?」
「へ? は……」
オレの胸に顔を埋めた知巳がもごもごと言う。
何が……って、乳首、だよな?
オレ?
オレ?
「……わかんね」
んなもん、試したことねえよ。